前向きに読み解く経済の裏側

2018年1月1日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

凍り付いていた人々のデフレマインドが少しずつ溶け始めた模様

 バブルが崩壊してから20年以上、景気は低迷を続けていました。ようやく回復しかけたら米国ITバブル崩壊やリーマン・ショックなどによって国内経済が手痛い打撃を被り、再び不況に逆戻りする、という事を繰り返していたのです。そうしている間に、日本人の家計にも企業経営者にも投資家にも、「多少良いことがあっても、どうせ遠からず再び事態は悪化するに違いない」という「デフレマインド」が染みついてしまったようです。

 そうなると、企業は景気が良くなっても設備投資をせず、円安になっても海外生産を国内に戻そうとせず、家計は所得が増えても消費を増やそうとしないので、景気拡大の好循環がうまく働かないのです。

 しかし、景気回復が5年を超え、ようやく人々の冷え切ったマインドも少しずつ温まって来たようです。消費は未だですが、設備投資も輸出も少しずつ増え始めたのです。株価の上昇を見ると、投資家のマインドも、ここに来て少しずつ温まって来ているようです。消費が増えるのも、時間の問題だと期待しましょう。

バブル崩壊後の諸問題が一気に改善中

 バブル崩壊後の日本経済は、長い間失業問題に悩んでいましたが、それは既に消え、今や労働力不足に悩むようになっています。これまで仕事探しを諦めていた主婦や高齢者も仕事が見つかるようになっているのです。

 就職活動に失敗して非正規労働者となり、そのまま非正規労働で生計を立てている「ワーキング・プア」と呼ばれる人々も、労働力需給の引き締まりによって時給が上がり、少しはマトモな生活が出来るようになっていますし、中には正社員になれた人も出始めています。

 ブラック企業も、減りつつあります。ブラック企業が存続出来ているのは、社員が辞めようと思っても、「辞めたら失業だよ」という企業側の脅しに屈するからです。しかし、労働力不足が本格化して来たため、ブラック企業を辞めても他社が雇ってくれるようになりました。そうなると、ブラック企業は待遇を改善して社員を引き留めるか社員が退職し続けて倒産するか、という事になるのです。

 物価下落と景気悪化の悪循環であるデフレスパイラルも、既に止まっています。ヤマト運輸が値上げをしたら、ライバルが「価格を据え置いてヤマトの顧客を奪う」戦略を採らず、追随値上げをしたのです。労働力不足で苦しいのはライバルも同じだからです。ということは、似たような事は他の業界でも遠からず生じるでしょう。デフレを脱却して、インフレの時代に入ったのです。

 こうした変化は、すでに生じています。今後も、景気が腰折れしない限り続くでしょう。そして、より大きな目で見れば、日本経済は、新しい時代を迎えつつあります。「黄金時代」とも呼ぶべき新しい時代の入り口に立っているのです。そのあたりについては、拙稿「少子高齢化で日本経済が迎える黄金時代」をご覧いただければ幸いです。

  
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