2024年11月21日(木)

補講 北朝鮮入門

2017年12月25日

 公募で決まる2017年の「今年の漢字」は「北」だった。理由の筆頭に挙がったのは、たび重なるミサイル発射や核実験といった北朝鮮の動向だ。北海道上空を飛び越える軌道でミサイルが発射され、Jアラート(全国瞬時警報システム)のサイレンが鳴り響いたのも今年だった。年末に発表された内閣府による「外交に関する世論調査」では、北朝鮮への関心事項のトップが「ミサイル問題」(83.0%)となり、「日本人拉致問題」(78.3%)を上回った。拉致問題よりミサイル問題への関心度の方が高くなったのは、日本と北朝鮮の関係が調査項目に入った2000年以降で初めてである。1月に就任したトランプ米大統領は金正恩国務委員長を「ちびロケットマン」と呼んで挑発し、金正恩委員長はトランプ大統領を「老いぼれ」とあざけった。

(提供:KCNA/UPI/アフロ)

 今までなら一笑に付されていたであろう「米国による先制攻撃」も、トランプ氏ならばあるかもしれないと繰り返し心配された。12月になってからも「金正日国防委員長の命日である17日に開戦」だとか、「クリスマス休暇で在韓米軍の家族が帰った時があぶない」などという説がとなえられたほどだ。

 国連安全保障理事会が採択した制裁決議の本数を見ても、北朝鮮をめぐる危機が昨年から急速に深刻化していることを読み取れる。北朝鮮が初めて核実験を行った2006年からの10年間に4本だった制裁決議が、昨年は2本、今年は4本となった。この2年間で、それ以前の10年間の1.5倍というペースである。

 北朝鮮をめぐる危機が深まった2017年という年が暮れる前に、この1年を振り返っておきたい。

初のICBM発射、北海道上空越えのミサイルも

 1月20日に就任したトランプ米大統領は、事前の予想を覆して北朝鮮の核・ミサイル問題を重視する姿勢を見せた。北朝鮮の核問題に対応してきた過去25年間の歴代政権が取ってきた政策をすべて失敗だったと決め付け、軍事行動を意味する「すべての選択肢」を強調する強い姿勢だった。実際の政権としては、強い圧力をかけることで北朝鮮を交渉の場に引き出すことを主軸とし、そのために軍事力を見せつけるというのが基本方針だ。しかし、大統領自身がしばしば軍事力行使をにおわせる不規則発言(ツイート)を繰り返した。北朝鮮が核実験やミサイル発射を繰り返したことに加え、トランプ氏のこうした姿勢が危機感を増幅させた面は否定しがたい。

 北朝鮮では今年、「3・18革命」と「7・4革命」という言葉がけん伝された。

 3月18日には金正恩委員長の指導の下でミサイルの新型エンジンの燃焼試験に成功したとされる(「3・18革命」)。そして、7月4日には初の大陸間弾道ミサイル(ICBM)である「火星14」のロフテッド軌道での発射を成功させた(「7・4革命」)。この日は米国の独立記念日であり、金正恩委員長はICBM発射を米国への「贈り物」と称した。金正恩委員長はこの際、「今後も大小の『贈り物』を頻繁に贈ろう」と語った。その言葉通り、7月28日に「火星14」を再びロフテッド軌道で発射した。

 8月29日と9月15日には北海道上空を通過させて中距離弾道ミサイル「火星12」を発射した。この時には、高い角度に打ち上げて飛距離を抑えるロフテッド軌道ではなく、飛距離を伸ばす通常の軌道での発射だった。さらに11月29日には米国本土に届く飛距離を持つICBM「火星15」をロフテッド軌道で発射した。この間の9月3日には、広島型原爆の約10倍という威力の核実験(6回目)を強行している。


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