2024年12月22日(日)

40代からの脳力の磨き方

2009年2月27日

最大酸素摂取量の減少で脳の酸素も減少

 脳の働きが低下するいちばんの原因は、加齢とともに脳に酸素を取り入れる能力が衰えることにあります。その能力は、最大酸素摂取量で表すことができます。酸素は肺を通して体に取り入れられるため、最大酸素量を決めるのは胸郭の大きさです。

 胸郭の大きさは一般的には20歳ごろに最大になります。運動習慣がない人の場合は、それ以上胸郭は大きくならないため、最大酸素摂取量も20歳ぐらいがピークで、あとは下降の一途をたどります。

 持続的に有酸素運動と無酸素運動を行なっている人の場合は、成長期を過ぎても身体が大きくなるので最大酸素摂取量を高めることができますが、その場合も、35歳ごろがピークで、その後は少しずつ下がっていきます(図1)。

 一旦衰え始めた最大酸素摂取量は、その後運動をすると少し高くなりますが、最大値まで戻すことはできません。そのため、運動習慣がない人は20歳ごろから、運動習慣がある人は35歳ごろから、脳の働きは低下し始めるということを自覚する必要があります。

60歳を過ぎると萎縮を始める脳

 もうひとつ、脳の働きが低下する原因となるのが、脳の萎縮です。一般的には60歳ぐらいから始まります。図2は、65歳以上で健康な人の脳が、どのように変化していくかをMRIで撮影したものです。年齢とともに、頭蓋骨硬脳膜と脳の間に隙間が広がり、脳が全体的に萎縮している様子がわかります。

 なぜ萎縮するかについては、まだ詳細は明らかにはなっていません。しかし、60歳以降は脳に取り込める酸素が少ないうえに、萎縮が始まるのですから、脳の働きが低下するのは避けられません。

脳のためには血圧は120/80㎜Hg以下に

 さらに、図2‐aのように萎縮し始めた脳の白質部分に、ところどころ白くなっているところが見られます。これは毛細血管が詰まって起こる小さな脳梗塞(ラクナー梗塞)の跡です。高齢になると、健康な人にも見られますが、血圧が高めの人に多い傾向があります。血圧が高くなると血管は動脈硬化を起こし、毛細血管の多い脳では、体よりも先にその兆候が現れてしまいます。

 現在、高血圧とは、最高血圧が140㎜Hg、最低血圧が90㎜Hg以上、メタボ健診で要注意とされるのは最高血圧130㎜Hg以上、最低血圧が85㎜Hg以上となっています。しかし、これはあくまでも、体の健康を考慮した目標値です。脳内の毛細血管で起こる動脈硬化を防いで脳の働きを低下させないためには、それよりも厳しい基準になります。最高血圧は120㎜Hg以下、最低血圧は80㎜Hg以下になるようコントロールすることが重要です。アメリカの医師会では、この数値以上は「健常ではない」と考えています。


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