40代からの脳力の磨き方

2009年2月27日

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久保田競 (くぼた・きそう)

東京大学医学部を卒業後、同大大学院で脳神経生理学を学ぶ。1967年に京都大学霊長類研究所で助教授から所長を歴任し、京都大学を退官。京都大学名誉教授に。現在も研究活動を続けながら、森之宮病院と日立製作所基礎研究所の顧問、国際医学技術専門学校の副校長を兼任。著書に『脳を良くする小さな習慣』(アスキー)『衰えない脳は14日でつくれる』(大和書房)ほか。

行動を起こすしくみと、記憶するしくみ

 脳が働くしくみは複雑ですが、私たちが何か行動を起こす場合の大脳皮質における一般的な流れをお話しましょう。

 行動を起こすきっかけとなる刺激は、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感が感知し、刺激情報は脳の頭頂葉、側頭葉、後頭葉にあるそれぞれの専門領域に伝わり、一時的に記憶されます。その情報が前頭前野に伝わると、おもに46野が働いて、情報を分析して行動を計画。それを運動前野の6野と運動野の4野がキャッチし、どのように動くかを身体の各部位に命令をし、実際の行動となって表れます。このときの情報伝達は、すべて神経細胞(ニューロン)を通して行なわれています。

 また、脳が記憶をするしくみも複雑ですが、新しいことを記憶するときには、必ず海馬が働いていることがわかっています。ラットなど下等動物では、海馬自体に記憶が保存されていますが、人間の場合は、「海馬自体には記憶を長期保存しておく働きはなく、新しく記憶するのを一時的に助ける働きがある」というのが定説です。

ワーキングメモリーを鍛えるのが脳力アップの鍵

 一時的に記憶された情報は、何度も記憶が再生されるうちに、神経細胞同士のつながりが強くなり、知識として長期記憶に刻まれていきます。そこに至る間、一時的な記憶は短期記憶として前頭前野の大脳皮質に保存されています。その短期記憶は「ワーキングメモリー」と呼ばれ、これが、脳力を高められるかどうかの鍵を握っています。

 「ワーキングメモリー」が覚えているのは、好きな野球選手の打率や昼に食べたメニューなど、すぐ忘れても困らないようなささいな記憶ばかりです。しかし、このワーキングメモリーを鍛えると、脳の働きがよくなることがわかっているのです。

 ワーキングメモリーは、ささいなことでも時々思い出して、現在の状況と比較することで鍛えることができます。たとえば、好きな野球選手の打率であれば、「おとといは2割7分6厘、きのうは2割8分3厘、今日は3割5厘だったな」と思い出して比較するのです。比較することで、ささいな記憶が知識として蓄積されていきます。これが、ワーキングメモリーを鍛えて神経細胞のつながりを強化し、脳の働きをよくするひとつの方法です。

 しかし、実はもっと簡単に大脳皮質の神経細胞を増やし、脳力を高める方法があります。しかも、その方法を習得すれば、ワーキングメモリーの働きをさらによくすることもできるのです。

 その秘訣は、食生活と運動などの生活習慣にあります。生活習慣をどうすれば、簡単に脳力をアップすることができるのか? その詳細については、次回から3回にわたってお話していきたいと思います。

【連載】40代からの脳力の磨き方
第2回:「脳力を効果的にアップする食べ方」があった!
第3回:脳は適度な運動でまだまだ活性化できる
第4回:「脳に良い習慣」で人生を活性化しよう!

illustration:秋田綾子

「ド忘れ」が多い人は要注意
 記憶の衰えを示す症状に「ド忘れ」があります。記憶していたことがすぐには思い出せないけれど、しばらくたつと思い出すことがあるので、生活には支障がなく、そのまま放っておくのが一般的です。しかし、「ド忘れ」が起こったときに脳を調べると、実際に記憶力は低下し、海馬も萎縮しています。「ド忘れ」の症状が起こった人を検査すると、記憶障害MCI(軽度認知障害)がみつかることもあります。そのうち30%の人は、2~3年後にアルツハイマー病を発症するというデータもあります。「ド忘れ」は、脳の異常を示す注意信号です。「ド忘れ」が頻繁に起こる人は放置せず、脳の検査をするとともに、すぐに、脳の衰えを防ぐためのトレーニングを始めることをおすすめします。

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