英フィナンシャル・タイムズ紙の1月4日付け社説は、サウジのムハンマド皇太子の改革は同国に重要な変化をもたらしている、と述べています。要旨は以下の通りです。
サウジの改革は過去微妙なバランスを取りながら行われてきた。改革派に対する譲歩は、保守的な宗教勢力に対する譲歩でバランスがとられた。
石油に対する依存を弱め、超保守的な社会規範を揺さぶるムハンマド皇太子の野心は、過去との決別を意味する。
過去にも石油価格が低下した時改革が語られたが、石油価格が回復すると改革は忘れられた。
しかし今回が過去と違うのは、サウジが石油産業の構造的変化を認識していることである。石油価格はサウジ政府が予算を均衡できる水準まで回復しそうにない。そのため経済を多角化し、国民がゆりかごから墓場まで国の福祉策に依存することを辞めなければならない。サウジ政府はもはやそのような福祉策を実施できない。
5%の付加価値税の導入は小さな一歩かもしれないが、これまで税金を払わずに来た社会にとって重要な変化であるとともに、国民の反発の危険をはらんでいる。
サウジ政府がガソリンの補助金を削減した結果、オクタン価の低いガソリンの値段は83%、高いガソリンの値段は127%上がった。
皇太子は2018年に、改革の柱の一つであるサウジ・アラムコの株の5%を売却する計画である。
皇太子は、苦痛を伴う経済政策を実施する一方で、サウジの時代遅れの社会的伝統の一部を廃止することでバランスを取り、国民の3分の2を占める30歳以下の層の支持を取り付けている。宗教警察の権限を奪い、男女の差別を軽減し、映画の上映を解禁した。ほどなく女性の運転禁止は廃止されるだろう。
これらは正しい方向を向いた措置であり、歓迎すべきだが、道のりは長く、困難なものであることは疑いない。
皇太子は2つの点で任務をより困難にした。一つは地域での冒険主義に乗り出していることである。イエメンでの戦争への関与は高価で悲しむべき大失敗である。カタールを孤立させようとの外交的努力も実を結んでいない。エネルギーと資源は国内で使うべきである。
もう一つは、有力な王族や実業家を、不正に得た何十億ドルもの資金を回収するため拘束したことである。
サウジのエリートに無駄使いを辞めさせるこの試みは、皇太子自身がフランスに3億ドルもする城や、それ以上高価なスーパーヨットを買ったことで、信頼を失った。
持続可能な経済は公正と公平の原則を尊重する。もし多くの国民の可処分所得が減っているときに皇太子がこの原則に反していると思われたら、称賛に値する改革の努力は危険にさらされることになる。
出典:‘Saudi Arabia’s small step towards sustainability’(Financial Times, January 4, 2018)
https://www.ft.com/content/ce81f33a-f093-11e7-b220-857e26d1aca4