西山隆行が読み解くアメリカ社会

2018年1月22日

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西山隆行 (にしやま・たかゆき)

成蹊大学法学部教授

東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。甲南大学法学部教授を経て現職。専門は比較政治・アメリカ政治。著書に『アメリカ型福祉国家と都市政治』(東京大学出版会)、『移民大国アメリカ』(筑摩書房)、『アメリカ政治』(三修社)などがある。

 2018年1月20日、アメリカのドナルド・トランプ大統領は政権発足一周年の記念日を、連邦政府諸機関が一部閉鎖された状態で迎えることとなった。アメリカの会計年度は10月1日に始まるため、予算は本来ならば2017年9月末日までに成立していなければならなかった。しかし、それまでの間に予算が成立しなかったため、これまで4度にわたり暫定予算が組まれてきた。1月19日に4度目の暫定予算が期限を迎えることになっていたため、同日までに予算を通過させるか、5度目の暫定予算を通過させる必要があった。共和党指導部は30日間の暫定措置をとる法案を通過させようと模索していたが、議会上院を通過するのに必要な60票を確保することができず、連邦政府が一部閉鎖する事態に陥ったのである。

(写真:ロイター/アフロ)

 これまでにも、連邦政府の一時閉鎖は何度か起こってきた。前回の閉鎖は、2013年10月に発生した。ティーパーティ派が中心となって、民主党のバラク・オバマ政権が推進しようとしていたオバマケアに対する反発を背景として予算成立に反対し、連邦政府が16日に亘り閉鎖する事態となったのである。

 予算が成立していない状態では、国立公園が閉鎖されたり、パスポートの発給に関わる手続きが遅れたりするなど、様々な政府機能が滞る。もっとも、従軍中の兵士や刑務官の仕事などは継続されるが、その給与の支払いが遅れるなどの問題が発生する。

統一政府の状況下で
連邦政府の機能が一部停止する異例の事態

 アメリカの予算の作り方には大きな特徴がある。予算が法律として作成されるので、連邦議会が基本的な権限を持つとともに、党派対立が先鋭に表れるのである。

 多くの国では内閣、行政府が予算案を作り、議会がそれをそのまま通すのが一般的である。議院内閣制の国の場合には、行政府を議会の多数派、すなわち与党が支えているため、政府が提出した予算が通らない事態は基本的に想定されない。だが、アメリカの場合は事情が異なる。大統領は毎年予算教書を発表するものの、予算を作るのは議会なので、大統領が実施したいと考える政策に予算がつかない事態が発生するのである。

 具体的に述べると、連邦議会が法案として予算案を出し、上下両院で同じ法案が通過した場合にそれを大統領が承認すれば、予算は成立する。しかし、大統領が拒否権を行使すれば予算は成立しない。なお、通例の法律は議会で多数の支持を得れば成立するが、予算については上院を通過するためには60票の賛成が必要である(上院の議員数は100名である)。

 大統領制を採用するアメリカでは、連邦議会議員と大統領が異なる選挙で選ばれるため、一方(議会)が他方(大統領)を選出するような関係ではない。そのため、連邦議会上下両院の多数と大統領職を同一の政党が支配する統一政府と呼ばれる状態も発生するが、いずれかの部門を異なる政党が支配する分割政府と呼ばれる事態がしばしば発生する。分割政府の下では、予算が通過しにくくなる可能性が高まる。これまでの歴史上、予算が成立せずに政府が一部閉鎖したのは、全て分割政府の時期だった。しかし、今回初めて、連邦議会上下両院と大統領職の全てを共和党が支配する統一政府の状況下で、連邦政府の機能が一部停止する事態が発生したのである。

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