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2018年1月23日

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藤 和彦 (ふじ・かずひこ)

経済産業研究所上席研究員

1960年、愛知県生まれ。早稲田大学法学部卒。通商産業省(現・経済産業省)入省後、エネルギー・通商・中小企業振興政策など各分野に携わる。2003年に内閣官房に出向(エコノミック・インテリジェンス担当)。2016年から現職。著書に『日露エネルギー同盟』『シェール革命の正体 ロシアの天然ガスが日本を救う』ほか多数。

 人工知能(AI)の導入が今後飛躍的に進む可能性があるとされる昨今、「仕事の大半が将来失われてしまうのではないか」という不安が広がりつつある。

Jirsak/iStock

 現在のAIは限られた領域(例えば将棋・運転など)に特化して能力を発揮するもの(特化型AI)だが、2030年頃にはあらゆる領域で能力を発揮するAI(汎用AI)が実現するとの期待が高まっている。汎用AIは特化型AIに比べて格段のコスト低下につながる(かつてのワープロ専用機がWindowsのワードに駆逐されたことを想起せよ)ため、その導入拡大は今後飛躍的に進むのではないだろうか。

 『人工知能と経済の未来 2030年雇用大崩壊』の著者である駒澤大学の井上智洋准教授は「汎用AIが2045年にはかなり普及しており、残っている雇用分野は(1)クリエイティブ系(2)マネジメント系(3)ホスピタリティ系に限られ、就業者数は約1000万人になる」と予測している。マイケル・オズボーン・オックスフォード大学准教授は「2011年度に米国の小学校に入学した子供達の65%は大学卒業時に現在存在していない職業に就くだろう」と予測している。

アンディ・ウォーホルの予言した未来

 情報革命の進展により仕事がますます細分化され、サラリーマンの仕事に生きがいを見つけることが難しくなっている現在の若者は衣食住よりも快感を求める傾向が強いと言われている(団子より花)が、汎用AIの導入によりモノの値段が劇的に下がれば現在「遊び」でしかないような活動でも生活できるようになる人が増えるのではないだろうか。

 ユーチューバーがその典型だろう。

 ソニー生命保険が2017年4月に実施したアンケートで男子中学生が将来なりたい職業の第3位に「ユーチューバーなど動画投稿者(17%)」がランクインしたが、ユーチューバー達は面白い企画(歌や踊り、創作料理、メイク術など)を考えて映像作品を発信し、視聴者数をマネタイズして生活の糧にし始めている。

 米国では2015年10代の若者に対して「セレブとは誰か」とのアンケートが実施されたが、トップ10のうちトップ5がユーチューバーとなった。日本でもカリスマ・ユーチューバーは当たり前の存在になりつつある。

 誰でもライブ放送ができるアプリ「SHOWROOM」も大人気である。

 2017年の流行語大賞は「インスタ映え」だったが、かつては「特別なイベントの記録」だった写真や動画は今や「感情や状況を共有するコミュニケーションの道具」となりつつある。「日常の中の見過ごされがちな楽しさや美しさをすくいとる」という行為が急速に拡大した。微細な変化を敏感に察知できる感性がますます重要になっている。

 情報革命の結果、ツイッターやフェイスブックなどのプラットフォームには専門家ではない一般人の手による写真や絵が膨大に流通しており、民主的かつ巨大なコンテンツ鑑賞空間がネットに広がり、あらゆるコンテンツが万人によって選び取られシェアされるようになった。自分の曖昧な気持ちを曖昧のままに画像や動画などで伝えることができるようになり、新しいことはすべて自己表現の手段になるというのがSNS時代の特徴だ。かつてアンディ・ウォーホルが予言した「誰もが15分間は有名になれる時代」が現実化したのである。

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