チャイナ・ウォッチャーの視点

2010年12月24日

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富坂 聰 (とみさか・さとし)

ジャーナリスト

1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。

 2010年、上海万国博覧会を行った中国を振り返り、この国の現状を分析すると同時に今後を予測する――。今年最後の原稿のテーマとして、編集部からこんな宿題をいただいた。つまり、現在の中国をどう位置付け、日本人はどう付き合ってゆけば良いのかという読者の疑問に答えることだ。

今年の中国を漢字一文字で例えるなら……

 もちろん正解にたどり着くことは簡単ではない。ただ一つはっきり言えることは中国が極端な二面を持っているということだ。例えるなら「火」である。日本にとって「危険な存在だが、使い方によっては日本人の生活を飛躍的に豊かにもしてくれる」からだ。似ているのは人間と宗教の関係だ。心の支えとなる一方で、時に一部の新興宗教のように社会から敵視され唾棄の対象にもなり得る。熱心な信者か忌避か、極端な反応を相手から引き出してしまうのだ。

 象徴的だったのは、今年の中国報道に見られた大きなブレだ。年の前半には、中国人観光客が大挙して日本に押し寄せ爆買いする話題で持ちきりで、視点の中心は「いかに中国マネーを取り込むか」であった。これに対して後半のテーマは専ら中国異質論で、「いかに中国の影響を排除できるか」に重心が傾いていった。〝分裂〟は、まさしく中国が引き起こす典型的化学反応なのだ。

 かつて日本の政界もメディアも中国をめぐり真っ二つに分かれて対立したものだが、現在はこれが時差を経てアメリカに伝播したようだ。正確には2000年代の半ばからの現象だが、いま米議会では「パンダハガー(パンダを抱く者=親中派)」と「ドラゴンスレイヤー(龍を殺す者=反中派)」の対立が顕在化し、中国に対峙した国が避けられない分裂に陥っている。

 もっとも尖閣諸島沖の漁船衝突事件後の日本の政界の反応は、必ずしも二者対立の構図からは説明できなくなっている。与野党間に温度差こそあれ中国が「けしからん」という点では一致しており、中国擁護論は見当たらなくなっているからだ。

なぜ日本の財界はダンマリなのか?

 では、日本においてはすでに二元的な対立は消滅してしまったのか?

 答えはそうではない。実は、日本における中国を巡る対立軸は、すでに与野党という枠の中ではなく政界と財界というスケールアップした次元へと高まっているのだ。

 これこそ来年以降、中国と向き合う上で日本が直面する最も大きな問題である。政界や圧倒的国内世論VS企業、対外開放の推進派と慎重派、対外強硬派と宥和派などの間に起きるデカップリングの問題だ。なかでも深刻なのは中国排除の世論と収益の点で大きく中国に依存する企業との乖離である。

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