2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2018年2月8日

 2018年1月6日付のニューヨーク・タイムズ紙で、同紙記者のサンガーとブロードが、米国の情報機関はこれまでの北朝鮮の核・ミサイルの開発の速度を過小評価してきたが、今は過大評価しているきらいがあるとの解説記事を書いています。解説記事の要旨は以下の通りです。

(iStock.com/vladwel/ -ELIKA-/ Sergii Tverdokhlibov)

 米国は、北朝鮮の核・ミサイル開発を今まで過小評価してきた。米国の情報機関は、重要な要因を見落としていた。1つは、旧ソ連のミサイル科学者が北朝鮮に移住し、重要な技術移転をしたことである。

 2006年、米国は北朝鮮の最初の地下核実験に驚いた。2008年、当時のライス国務長官は、北朝鮮が長距離ミサイルの開発に着手していると述べた。

 金正日を引き継いだ金正恩について、米国の情報機関は、若くて未経験で、軍に不信感を持たれているので、長続きはしないだろうと考えた。その後4年間、北朝鮮のミサイル実験は失敗続きであった。しかし、その間、金正恩は権力の基盤を固め、抑止力としての核開発を進めた。

 現在、米国の情報機関の中でも、北朝鮮の能力に関して見解の相違がある。北朝鮮の保有する核兵器の数は20~30とされるが、国防省の情報局は50としている。北朝鮮の弾頭の大気圏再突入能力につき、ポンペオCIA長官は、獲得するのは何か月かの問題であると言った。マティス国防長官は、昨年11月のICBM実験は、北朝鮮がすでに世界のどこでも攻撃できる能力を持っていることを示していると述べた。米国政府は過去北朝鮮の能力を過小評価してきたが、今はそれを過大評価していると指摘する専門家もいる。

 元ロス・アラモス研究所長のヘッカー博士は、北朝鮮が米国の諸都市に脅威を与える兵器を開発するには、少なくともあと2年と何回かのミサイル・核実験を要するので、現在の緊張を和らげ誤解を避けるための対話を始める時間は未だあると述べた。

出 典:David E. Sanger & William J. Broad ‘How U.S. Intelligence Agencies Underestimated North Korea’ (New York Times, January 6, 2018)
https://www.nytimes.com/2018/01/06/world/asia/north-korea-nuclear-missile-intelligence.html?_r=0


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