チャイナ・ウォッチャーの視点

2018年1月31日

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山口亮子 (やまぐち・りょうこ)

ジャーナリスト

2010年京都大学文学部卒業、2013年北京大学歴史学系大学院修了、時事通信社を経て16年よりフリージャーナリストとして活動。

 アメリカに次ぐ規模のベンチャー市場を持つ中国。人口の1割が起業家とまで言われる事態はどうもたらされ、今後どうなっていくのか。五つのキーワードから読み解く。

1.豊富な資金

 なぜ中国でベンチャーがこれほど多く、しかもユニコーン企業(非上場で時価総額が10億ドル以上)が米国に次いで多いのか。人口の多さももちろん理由の一つだが、ベンチャー市場に出回っている潤沢な資金が事業拡大の推進力になっている面も見逃せない。

自転車シェアリングサービス大手ofoの自転車。テンセントの投資を受けたMobikeに猛追されてきたが、ここにきて配車サービスの滴滴出行も参戦。ほかにも多額の投資を獲得する競合がいて、まだ誰が勝者になるか見通せない(北京大学)

 

米除くとユニコーンの52%が中国企業

 昨年12月、中国の配車サービス大手、滴滴出行(ディディ・チューシン)が40億ドル(4500億円)を調達し、企業価値が500億ドル(5兆4000億円)超になったことがニュースになった。10月にやはり40億ドルを調達した美団点評は、企業価値が300億ドル(3兆3000億円)とされた。中国のユニコーンは55社あり、米国を除くとユニコーンの52%が中国にあると、CBIは昨年9月に発表している。

 滴滴出行や美団点評は、それぞれ本業の配車サービス、レストランの口コミで圧倒的なシェアを拡大している。だが、こうした巨大なユニコーンであっても常に競争にさらされている。配車サービスでは、美団点評が豊富な資金を使って滴滴出行に対抗するサービスを構築しているところだ。

 中国ではそれぞれ違った強みを持つ大手が複数社、同じ分野でしのぎを削っているということが珍しくない。巨額の資金が市場に出回っているため、それぞれの会社が大口の資金を調達し、サービスをブラッシュアップしていくからだ。

 たとえばOTA(Online Travel Agent、オンライン上のみで取引を行う旅行会社)。日本なら楽天とじゃらんが二強で、そのほかに高級路線の事業者や海外の事業者などが混在している。一方の中国は、日本人向けサービスも開始したCtrip(携程)のほか、途牛(Tuniu)、同程、アリババの飛猪(Fliggy)など様々なサービスが乱立している。

 業界をリードしてきたCtripは大手のQunar(去哪儿)と合併し巨大化しているが、飛猪も堅調にシェアを伸ばしており、かつ後発組の美団旅行が破竹の勢いで拡大しているという、誰が覇権を握るのかまだ見通せない状況だ。個人旅行の螞蜂窩(Mafengwo)、海外旅行のQyer(窮游網)など、特徴を明確にしたサービスも健闘している。

(キャプション)北京市朝陽区にある泰康金融大廈には、米国のVC、Matrix partnersや中国系のVC、投資基金などが入居している

 「中国ではセコイアをはじめとする世界中から集まる外資系ファンドや中国系ファンド、個人投資家が豊富な資金をもって、投資先を探している。資金を獲得したベンチャーはそれぞれ質が高く、なおかつ違った強みを持つサービスを提供し、一定のユーザーを確保しています」

 こう解説するのは、日本情報に特化した中国最大のメディアネットワーク「GoJapan(去日本)」を運営する亜智游(北京)信息科技有限公司(Asia Smart Travel)の劉璐(リュウロ)社長。

 「実際、日本情報に特化したメディアもあれば、アメリカやイギリス、香港、台湾、タイなど一つの国やエリアに特化したメディアも複数あるわけですから」

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