ネット炎上のかけらを拾いに

2018年3月16日

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 「子どもは社会の鏡」という言葉もある。

数千人の球児がにじり寄る異様な光景

 タレントの稲村亜美が3月10日、日本リトルシニア中学硬式野球協会関東連盟の始球式に出席した際、グラウンドに集まった球児たちが殺到。あわや大惨事となった。

(iStock/poetic_disorder)

 この一報は、記事で読んだ。その後、ツイッターで出回っている動画を確認し、異常な光景に驚いた。もし観客が撮影した動画がネットで拡散されなければ、この件はここまで大きく問題とならなかったに違いない。映像には、「球児が殺到」「稲村さんを取り囲んだ」「中学生にもみくちゃに…」といった文章だけでは伝わらない、異様な様子が映し出されている。

 明治神宮のグラウンド上に、当時数千人の中学生がいたという。動画を確認すると、マウンドに立った稲村と中学生たちの距離ははじめからかなり近い。5~6メートルの距離に、ぐるりと取り囲むように数千人の男子中学生が立っている。背伸びをしたり体の位置を変えたりしてもっとよく見ようとしている球児が多く、全体的にざわついている様子が見て取れる。

 そして、少しずつ中心に近づく動作をする球児の様子が確認できる。取り囲んでいる球児にしてみれば、他の球児が近づいているから、自分ももう少しは行けるだろう。そのように思ったのではないだろうか。また、その場の「ノリ」に抗えなかった球児もいるのだろう。少しずつ円は小さくなり、稲村に近づくスピードが速まる。

 そしてわずか十数秒のうちに球児たちが稲村に押し寄せ、彼女の姿はまったく見えなくなる。数人の球児が軽傷を負ったというが、稲村を含め重傷者が出なかったことが奇跡と思える光景だ。この映像を繰り返し見たいとは思えない恐ろしさがある。

 ネット上の反応を見ると、多くのコメントが中学生を非難し、稲村さんに同情している。もしこれが、記事だけだった場合、こうはならなかっただろう。動画が拡散する前に始球式の様子を報じたスポーツ誌は大きな問題として扱ってはいなかった。

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