使えない上司・使えない部下

2018年5月8日

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吉田典史 (よしだ・のりふみ)

ジャーナリスト・記者・ライター

ジャーナリスト。1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年から、フリー。
主に、人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。『悶える職場』(光文社)、
震災死』『あの日、「負け組社員」になった…―他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)『封印された震災死』(世界文化社)など。

 今回は、シティコミュニケーションズ(グループ全体で社員295人、アルバイト932人)の下風能太郎人事課長を取材した。同社は、横浜市を拠点に総合アミューズメント業を展開する。パチンコやスロット、インターネットカフェ、フレンチレストラン、エステや岩盤浴、サウナ、カプセルホテル、最近はアニメソングカラオケカフェの運営にまで及ぶ。

 1995年の創業時から多様な人材を採用し、10年ほど前に三田大明社長の強いリーダーシップのもと、障がい者雇用の構想に着手し、本格的にスタートした。2015年には厚生労働省から「精神障害者等雇用優良企業」の認証を受けた。下風課長は、その最前線で奮闘している。

 現在は、グループ企業全体で22人(アルバイト20人、正社員2人)の障がい者が働く。障害の内訳は、身体2人、知的5人、精神15人。多いのはザ・シティが運営するパチンコ店・スロット店で、全12店舗の半数以上の店で、1~3人の障害者が勤務している。

 下風人事課長にとって、「使えない上司・使えない部下」とは…。

(elenabs/iStock)

障がい者と健常者が一緒に働く職場にしていきたい

 「障がい者の雇用を進めておられるようで、すばらしいですね」と言われることがあります。当社を評価していただくのはありがたいのですが、「なぜ、すばらしい…のですか?」とお聞きしたくなることがあるのです。

 この場合の「すばらしい」には、他人事のニュアンスがあるように感じます。誰もが障がい者になるかもしれないのです。今日、事故に遭うかもしれません。何かのきっかけで精神疾患になってしまうかもしれません。高齢者になったとき、体が不自由になる方は多いのです。年齢や性別に関係なく、誰しもが精神や体にハンディを負う可能性があります。

 私も10年前に障がい者雇用に携わったときは、他人事の感覚が心のどこかにあったのかもしれません。それでは、障がい者雇用に深く関わることはできないと今は思います。

 雇用を始めるに際にまず、障がい者の雇用に熱心な企業を見学させていただきました。大企業の特例子会社などの職場を拝見していくうちに、私たちが目指すものはここにはないのかもしれないと思うようになりました。障がい者の方は多数いらっしゃいましたが、健常者の社員が少ないのです。さまざまな事情があるのでしょうが、「障がい者雇用のための職場」という印象を受けました。

 私たちが理想とするのは、障がい者の方が健常者の社員が多数いる職場で自然な形で一緒に仕事をすることです。たとえば、ある店舗では、精神障がい者の男性が週5日、1日4時間の勤務(午前11時~午後3時)をしています。パソコンを使ってのデータ入力や店内の広告物の制作補助、店の周りや店内の掃除をしているのです。男性は、前職が飲食業でした。人間関係や職場の空気を読み、仕事をすることに疲れ、うつ病になってしまったのです。

 現在、グループ全体で約50店舗展開をしていますが、いずれは全店舗で少なくとも数人の障がい者の方が働くようにしたいのです。それが、自然な形だと思っています。社長は障がい者雇用を進めるにあたり、皆の前で話されました。「障がい者を差別したり、偏見のまなざしで見たりするならば、会社に残ってもらわなくていい」。こういうメッセ―ジを送っていただくと、会社全体で取り組みやすいのです。私の上司は2人いますが、自主的に行動させてくれています。会社や上司に恵まれていますよね。

 だから、なんとかして、障がいの有無にかかわらず、関係なく一緒に働く職場にしていきたいという思いでした。10年ほど前には、社内にこういう職場は少なかったのです。障がい者の方を雇うことで、多くの社員の意識や考え方がしだいに変わります。役員や管理職の人事マネジメントも変わっていったように思います。障がいの部位も程度もさまざまですから、それぞれの方の特性に応じたマネジメントが必要となります。それこそ、ダイバーシティーではないでしょうか。

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