日本の新常識

2011年4月4日

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菅原 琢 (すがわら・たく)

東京大学先端科学技術研究センター特任准教授、博士(法学)。専門は日本政治、政治過程論。主著は『世論の曲解―なぜ自民党は大敗したのか』(光文社新書)。国会議員白書 http://kokkai.sugawarataku.net/ 更新中。

明るい兆しがなかなか見えず、混迷が続く日本。そんな日本をこれから背負っていかなければならない世代が、遅々として変わらない既存の枠組みや制度から脱却し、世の中を良くするための新しい「常識」を提案する。第1回は、政治学者で東京大学先端科学技術研究センター特任准教授の菅原琢氏。選挙制度と世論について研究している菅原氏は、古い選挙のやり方を変えることで、より若い世代の政治への関心と影響力が高まるのではと期待している。

――日本の選挙の投票方法を、「個人への投票」から「政党への投票」へ移行すべき、とお考えとのことですが。

菅原琢特任准教授(以下菅原特任准教授): 国会議員も、地方議員も、首長も、日本のほとんどの選挙では「人」に投票します。唯一、国政選挙の比例代表では政党に投票しますが、衆議院比例区の当選者の大部分は小選挙区落選者の惜敗率によって決まりますし、参議院比例区は政党ごとに候補者個人の得票の多い順に当選します。つまり、候補者個人がどれだけ票を稼いだかが、選挙結果の大部分を決定します。そのため、候補者中心の選挙戦が展開されているのです。

――そのような候補者中心の選挙が、日本の政治の質の低下を招くのはなぜでしょうか。

菅原特任准教授:これはまず、政治家の出自や能力に大きく影響しています。多数の議席を獲得したいと思う政党の幹部は、新人を擁立するとき、なるべく資金や組織、人脈を持っている有力な候補を立てようとします。世襲候補や地方議員などがその典型です。議員秘書出身の候補が多いのもこのためです。逆に言えば、政党の側は、資金、組織、人脈などで劣っているような候補は、いくら能力が高くても擁立しないことになります。つまり、選挙で勝てる人、選挙の専門家であることが、日本の政治家に最も必要な資質となっているのです。

 このため、現在の日本の選挙では、特に優秀な若い人は出馬が難しくなっています。普通の若いサラリーマンなどが選挙に出ようと思っても、一般的に資産を多くもっていることが多い高齢者や、政治経験のある人々には到底かなわない。政党の幹部もそういう人を公認候補にはしないし、できない。選挙で負けた場合に責任を取らされるのは幹部ですから。

 例えばイギリスでは、日本の衆議院と同じく小選挙区制を採用しているのですが、選挙運動は政党に重きを置いて行われています。政党の側は、議員にしたい優秀な候補者を当選しやすい選挙区に移すこともあります。日本とは選挙区と候補者の関係が大きく異なっています。より若くて優秀な議員を出世させ、党首に選ぶのは、政党が自らをより魅力的にし、支持を獲得しようとしてのことです。ゆえに若返りも盛んになっています。

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