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2018年6月18日

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土方細秩子 (ひじかた・さちこ)

ジャーナリスト

ボストン大学コミュニケーション学部修士課程終了、パリ、ロサンゼルスでテレビ番組製作に携わり、1993年より米国でフリーランスのジャーナリスト活動を行う。

 世界中で今土地バブルが隆盛だという。ただし実際の土地ではない。バーチャルリアリティー(VR)の中に存在するジェネシス・シティの中での話だ。ジェネシス・シティはおよそ米国のワシントンDC程度の広さで、運営するデセントラランド社によると「世界初のユーザーによる3Dバーチャル・プラットホーム」だという。このジェネシス・シティの土地が100平米単位に売りに出されているだが、最高値は20万ドルという高額だ。

(HASLOO/iStock)

 バーチャル世界に現実の人々が投資、というと2003年に発表され当時話題を呼んだセカンドライフが思い浮かぶ。しかしピーク時でもセカンドライフの会員数は100万人程度と言われ、2011年以降は利用者数の発表が中止になるなど、成功したとは到底言えない。なのになぜジェネシス・シティに高額の投資が集まっているのか?

 その理由として、まず挙げられるのがセカンドライフは広大なVR空間が設定され、結果としてVR内での人口密度が低く、世界中の人と交流する、という目的が果たしにくかったこと、イベントなどが行われてもビジネスに結び付けることができなかったこと、などのセカンドライフの弱点をジェネシス・シティが理解したうえで構築されている、という点だ。ワシントンDC程度の限られた空間を設定することで空間内の人口密度を上げ、最初からビジネス利用を目的としている。

 VRとAR(拡張現実)の市場はマーケットリサーチ会社IDCによると2016年には52億ドル規模だったものが、2020年には1620億ドルに成長する見込みだという。いずれ現実のオフィスで仕事をすることはなくなり、人々はVRの中でオフィスを持ち人々とコミュニケーションをとり仕事をする時代が来る、と分析する専門家もいる。このため、業務として使えるVR空間があり、そこで「土地」が売りに出されればそれを買い、あるいは投資に、あるいは将来のビジネス利用に備えよう、と考える人が存在する。

 デセントラランド社は昨年8月にICOを行い、イーサリアムを用いた独自の仮想通貨、マナとジェネシス・シティの土地の交換を始めた。ICO開始直後に2600万ドルを集めたことで話題となり、その後現実世界と同様に土地は売買されその都度プレミアムがついてバブルを招いている。ここでは土地オーナーらの組合があり、ジェネシス・シティ内をエンターテイメント・ゾーン、ショッピング・ゾーン、ビジネス・ゾーンなどに区画整理し、ギャンブルも出来れば買い物や映画鑑賞、さらに仕事に必要な技術を身に着けるワークショップ、車の試乗、水中リゾートなど、様々な経験を提供できる場に成長している。

 そのバブルぶりを見ると、今年1月には数千ドルで取引されていた土地が、現在では10万ドル以上、という価格がついている。もちろん仮想通貨につきものの急激な価値の増加も拍車をかけている。現実の土地売買とは異なり、ジェネシス・シティ内では数時間で土地が売買されることも稀ではない。

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