したたか者の流儀

2018年6月26日

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パスカル・ヤン (Pascal Yan)

著述家

著述家。ルーヴァン・カトリック大学大学院中退(ベルギー)。証券マンとして25年間、欧州を中心に海外で過ごす。現在の職業は都内大学教授。

 

 「メルカリで売ってみよう」「ヤフーで売ってみよう」という言葉があるようだ。

 そこでは想像もつかないものが売られていると聞いた。たとえば株主総会の投票用紙だ。選挙の投票用紙が売買されたら7時のニュースネタになるだろう。昨年は株主総会の議決権行使書が売り買いされていたというのだ。

(aluxum/GettyImages)

 この時期、3月末に事業年度を終え、決算発表が始ってくる。その後、上場企業から自宅に議決権行使書が株主総会議案と共に送られてくる。

 日本には、延べ人数で5000万人もの個人株主がいるのは間違いない。御当局がそのようにいっている。一人で数十銘柄保有している場合があるので、実際は1000万から2000万人程度なのだろう。株主全員がこの郵便を受け取ることになる。

 すなわち、延べ人数5000万に1人たりとも例外なく招待状は届く。株主であれば配当はでないことがあっても議決権行使書は届く仕組みになっているのだ。冒頭の話、この葉書をネットで売ってしまう株主いたそうだ。

 株主総会の会場入り口では、身分証明書は要求されない。すなわち、女性名の株主であっても、他人の男性の招待状であっても総会に入場できてしまうようだ。自分では試したことがないが、受付のシステムから想像すれば問題なく入場できる。したがって、みやげ物が出る総会や、パーティーのある総会では、数千円は払っても儲かるので、買いたいという不届きものが出てしますようだ。忙しくて参加できない株主はネットで行使書を売る行動にでることになる。

 最近では、「一任します」という欄に○をつけて、シールで名前をかくしてお送り返すという仕組みになっている。個人投資家など物の数ではないのだという臭いもする。

 しかし、減ったとはいえ日本の上場会社の株式の20% 程度、すなわち120兆円以上の株式は日本の個人投資家が保有している事実を忘れていけない。

 平等原則により、株主の権利は個人投資家にも分け隔てなく相応にあるのだ。集まれば金額ベースでも120兆円と機関投資家に遜色ないサイズである。

 しかるに、機関投資家には議決権行使に向けて、最先端のICJ(東証による総会電子化推進のための会社)による電子化の恩恵を受けながらいち早く議案を知り、加えて議決権行使のためのアドバスをするような会社まである。

 翻って個人投資家は、白紙委任状さえ出してくれれば結構、総会に参加するならみやげ物を出そう。また株主平等原則に反して、1単元株を保有しているのであればそこそこ優待品やクオカードを与えるとしている。

 既に過半の上場企業は株主優待制度を導入しているのだが、1単元株保有株主でも10単元株保有株主でも1000円のクオカード一枚とされている場合が普通で、株主平等原則に反すると考えることもできる。

 便宜上、株主数拡大のために優待制度を導入していると思われるので、この不平等も是とすることもあるのかもしれないので平等原則の議論は一旦置くとしよう。

 しかし、機関投資家には、国際水準で対応がなされ、予め総会の議題が提示され、いわゆるスチュワードシップ・コードの観点から、企業との対話が準備される。

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