あなたの町は大丈夫?
自治体の脆弱な防災体制


吉井博明(よしい・ひろあき)
1971年東京工業大学大学院理工学研究科博士課程単位取得満期退学。1972~1980年(財)未来工学研究所研究員/主任研究員。1981‐1998年文教大学情報学部助教授/教授。1999~現在、東京経済大学コミュニケーション学部教授。専攻は情報社会論、災害情報論。

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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東日本大震災を機に、高まる防災意識。
しかし、市町村は、人手不足で研修を受ける余裕もないため、防災の専門知識やノウハウが著しく不足している。
政府は中央防災会議で防災計画の見直しを打ち出したが、足元の自治体の体制を強化できなければ、意味がない。

予算減が招く「広く薄く」

 東日本大震災を機に、各自治体でも防災の大切さを再認識しています。

 しかし、市区町村レベルではまだまだ担当職員が少なく専門性が低いのが現状です。

 総務省消防庁が行ったアンケート(2008年)によれば、防災を主管している部局(課もしくは室以上)は、「他の業務を兼任して防災を担当している」が79.9%で、うち兼任部署の79.1%は総務課です。さらには役所ですから防災担当者の人事ローテーションも多い。任期は「2~3年くらい」が46.6%、「4~5年くらい」が45.7%です。また、防災担当者の研修を「定期的に実施している」ところは、わずか12.0%、「不定期だが実施している」を入れても45.9%で、半分にも満たない有様です。特に、10万人未満の市町村では、ほとんど研修を受けていないのが実情です。また、予算がないために、職員自身が講師になって住民に対する啓発を行わなくてはならず、“手作り”であっても、専門性の低い職員による研修では問題もあります。

 このように、研修も受けていない、専門性の低い職員が短いスパンで防災を担当すると、どのような問題か起きるか。もし在任が3年程度ならば、1年目は勉強、2年目は実務で忙殺、3年目は異動の準備で終わり、流し運転で対応してしまいがちです。日本の行政にありがちなジェネラリスト養成型人事の悪い面が出ています。

 このような体制では、担当職員が専門性を高めて地域に根ざした綿密な防災計画を定め維持していくことは難しく、たとえ予算を確保できたとしても、ハザードマップの制作を業者に丸投げしたり、防災計画をつくるのにシンクタンクへ調査を丸投げしたりすることになります。また、いざというときに避難勧告・指示を出すのをためらって、避難の呼びかけが遅れたりすることが少なくありません。専門性を持った職員がいないことが、そういう悪い形で顕在化するわけです。

 こうした現状の背景にあるのは、結局財政です。自治体も人を減らされ、一人ひとりの担当する分野やカバーするエリアが増やされる。これは、多くの自治体が抱える問題構造です。

「地域防災計画」の問題点

 もちろん、防災対策がバラバラにならないよう、国は「地域防災計画」の作成を各自治体に義務付けています。これは国や都道府県が作ったプロトタイプを元にしたもので、あまり地域特性が反映されていない場合も多い。さらには作った当初の人間は、ある程度その内容を理解していますが、いつの間にか計画が存在することに安心してしまい、作ったあとは忘れ去られてしまうことも少なくありません。阪神大震災で被災した神戸市の職員の中には「地域防災計画があるなんて、震災後に知った」方もいたそうです。

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