家電口論

2018年8月11日

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多賀一晃 (たが・かずあき)

生活家電.com主宰

スマート家電グランプリ審査員。主催する『生活家電.com』を通じ、家電の新製品情報、使いこなし情報他を発信中。過去、某メーカーでAVメディアの商品企画を担当、オーディオ、光ディスクにも精通。また米・食味鑑定士の資格を有する。水、米、パン、珈琲、お茶の味に厳しい。

 「EV(電気自動車)は家電と同じ」と言われかたをする時があります。内燃機関であるエンジンではなく、モーターをパワーユニットして使うわけですから、家電技術の延長線上と言うこともできます。既に掃除機で有名なダイソン社も参入を発表しています。また、ネット接続は当たり前。自動操縦などの技術が実用化されつつあり、家電と同じ様にAIでコントロールされる時代も目の前に来ています。

 BMWのEV、 i3をロングドライブする機会に恵まれました。そこで体感したのは、今までのクルマとはかなり違う感覚です。当然、AI家電とも全く違います。そこには、自動車メーカーだからこその思想が満ちあふれていました。

BMWの中でも異彩を放つフロントマスク

3つのポイント

 BMWはコアブランドの『BMW』に加え、2つのサブブランドを持っています。1つは『BMW M』と呼ばれる、スポーティ路線。クルマとして高性能であり、刺激的であり、衝撃的な経験を目指します。BMWはモータースポーツでも名をなしたメーカーですから、当然のシリーズです。もう1つは『BMW i』。理想的なモビリティにして、インスピレーションを刺激するデザイン。次世代プレミアムを考慮しています。今回、ロング試乗したのは、BMW iの1つ i3です。

 i3には2種類あります。モーターだけを搭載したモノと、レンジ・エクステンダーと呼ばれる電気がなくなった時、ガソリンで少しだけ発電させるユニットが付いたモノです。ユニットは、BMWのビッグスクーター、C650の並列2気筒エンジンを流用。これで121km余分に走行できます。今回の試乗したはレンジ・エクステンダー付きです。

 カタログ風ですが、スペックから見てみたいと思います。

 全長:4020mm、幅:1775mm、高さ:1550mm。重さ:1420Kg。電気モーターの出力:125kW( 170馬力換算)、トルク:250Nm(25.5kg)。最高時速は150km。最高時速はクルマの性能と言うより、設定です。航続距離は条件によって変わりますが、350〜400kmというところです。普通に使うには、何ら問題のないスペックです。

 この数字の羅列を紐解いてみます。ポイントは車重です。レンジ・エクステンダーを付けないモデルは、1300kgです。きりがいいので、重さの話しは、こちらの数字で行いたいと思います。

 i3と同じ動力性能のガソリンエンジンを搭載したクルマを作ると1400kgになるそうです。そして、今までの技術でEV化するとそれより200kg重い、1600kgになるそうです。EV化すると車重は重くなるのです。これはバッテリーが重いためです。重いとフレーム剛性が足らない。フレームの剛性を取るため、鉄を使うとますます重くなります。悪循環です。重いとろくなことはありません。曲がらないし、止まらない。おまけに燃費も悪くなります。航続距離が不十分と言われているEVを考える時、重要なポイントの1つです。

 これに対するBMWの解答は、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)とアルミニウムを組み合わせた『ライフドライブコンセプト』の採用でした。カーボン素材は、剛性に優れる上、軽い。モータースポーツの最高峰F1マシンにも採用されています。欠点は生産性が異様に悪いことです。このためスーパーカーなどには採用されているのですが、一般車に採用されるなど、まずありません。精々アルミフレームどまりです。次の未来を示すi3に『ライフドライブコンセプト』を採用した理由は、BMWが「走り」を重視したためです。量産技術をモノにできたこともありますが、「走り」に妥協しないことが、次につながると考えたからです。

 2つめは「タイヤ」です。i3は径が大きく、幅が狭いタイヤを履いています。径が大きいのは、モーター1回転当たりの距離を稼ぐためです。幅が狭い(155mm)のは、転がり摩擦抵抗を少なくするためです。要するに、電費をあげることができるタイヤと言うわけです。

 サイズで言うと155 / 70 19。ちなみにタイヤの数値は、幅(mm)、扁平率、径(インチ)です。通常のガソリン車用のタイヤの幅は、215〜275mmです。

 細いタイヤは摩擦が少ない分、グリップ力が低下します。走る、曲がる、止まるという走行性能に影響を及ぼします。電費とグリップ力の確保という矛盾するスペックをまとめあげる必要があります。

 この類を見ないタイヤを引き受けたのはブリヂストン。なんでも元F1タイヤの開発部隊が開発したそうです。そんなタイヤをi3は履いているのです。

クルマ好きであるほど、びっくりするタイヤ幅

 そして3つめは、「椅子」です。クルマは運転という作業をするところです。上手く運転するには、この椅子がよくなければなりません。i3の椅子はとても運転しやすい。ちょっと堅めですが、リラックスできます。足なども動きやすいですし、個人個人の体型に合わせた設定もし易いです。ヨーロッパ車の美点に、椅子の良さがあります。日本が畳みの文化なら、欧州は椅子の文化ですから、椅子には並々ならぬこだわりがあります。i3も例外ではありません。

 この3つは「走り」にこだわった性能です。

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