家電口論

2018年8月26日

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多賀一晃 (たが・かずあき)

生活家電.com主宰

スマート家電グランプリ審査員。主催する『生活家電.com』を通じ、家電の新製品情報、使いこなし情報他を発信中。過去、某メーカーでAVメディアの商品企画を担当、オーディオ、光ディスクにも精通。また米・食味鑑定士の資格を有する。水、米、パン、珈琲、お茶の味に厳しい。

 東京電力パワーグリット(以下東電PG)と、インフォメティスが出資し、4月に営業を始めたエナジーゲートウェイ(以下エナジーGW)。安心・安全の電気の運用技術を持つ東電PGとAIによる分析技術に秀でたインフォメティスの強みを合わせた、IoTのプラットホームサービスを提供する会社です。

 その中の目玉サービスが「うちワケ」。インフォメティスの機器分離技術を使った、スマホで家電の現時点の消費電力が分かるサービスです。しかし、このサービス、いろいろな方向性を暗示しているように思います。

(fotojog/Gettyimages)

HEMSというシステム

 スマートハウスというと何をイメージされますか? AIスピーカーで家電を自由に操れる家のことでしょうか? それとも、スマートホンで扉を自由に開け閉めできる家のことでしょうか?

 実はスマートハウスの定義はまだありません。ただ、「IoTを利用した、より生活を便利にしてくれる家」という感じにまとめられると思います。

 ところで、ホームシステムに、HEMS(ヘムス。Home Energy Management System(ホーム エネルギー マネジメント システム))というシステムがあるのをご存じでしょうか?

 太陽光発電など「家庭で作る電気エネルギーを管理する」と共に、「家電の消費電力を管理」を行い、電力エネルギーを効果的に使おうとするシステムです。消費の方だけクローズアップすると、自動節電システムとも言うことができます。

 エネルギー資源に乏しい日本の未来を考えたシステムで、国の肝いりです。これの延長線上にあるのがZEH(ゼッチ。ゼロエネルギーハウス。家で使うエネルギーと、太陽光のように作りだすエネルギーの総和が0である家のこと。今後の標準ハウスと位置づけられている)です。

 ただHEMSは、発表発売などされてから5年以上経ちますが、まだ立ち上がっているとは言えない状態です。というより一般の方はほとんど知らない状態です。理由は、幾つかのハードルがあるためです。

IoTの前提のWi-Fi、便利なように見えて……

 実は、HEMSだけでなく、すべてのホームシステムに共通な問題が幾つかあります。それはIoTの原点とも言える接続の問題です。IoTだ、HEMSだ、ホームシステムだ、と言っても、ネット接続ができなければどうしようもありません。

 現在のホームシステムは、全てWi-Fiが前提となっています。ところが、手持ちのスマホで、経験された方も多いと思いますが、Wi-Fiは家のどの部屋でも均一な通信状態とはなりません。かなりの人が、スマホ片手に、家の中をうろうろしたことがおありだと思います。

 システムの場合、常時接続が当たり前なので、これはとても困ってしまいます。接続が不安定になるのは、Wi-Fiは、通信速度が速く、動画でさえストレスなく見ることができるのですが、その分、強い電波を必要とするためです。

 しかし、家電のセンサー情報、家電への命令は、動画に比べると情報量がひどく少ないのが現実です(玄関モニターなど、「動画」前提のものをのぞく)。そして家電は必ずしも電波状態が良いところにあるものではありません。

 このためIoTの重要ポイント「常時接続」がケーブル接続のように、実現できるわけではありません。各家、各家電で、必ず接続できるようにするとなると、とても厄介です。

IoT家電は、5000円以上高くなる

 HEMSの消費電力ですが、各家電から消費電力のデータをリアルでもらいます。そのデータで、多すぎ、丁度いいなどのを、ネット上のクラウドにあるAIが判断、家電にあーしろ、こーしろと指示を出して節約します。

 問題は、各家電のモニタリングができなければならないということです。消費電力が気になる家電としては、エアコン、冷蔵庫、電子レンジ、炊飯器、洗濯機、IHクッキングヒーター、掃除機、テレビ、ドライヤーなどの家電。照明などもLED化しないと、かなりの電力を消費します。

 問題は、「家電をIoT化させるには、Wi-Fiの通信システムを搭載しなければならない」ということです。

 今、国内メーカーでIoTを一番に進めようとしているのは、シャープです。電子レンジ、電気鍋、冷蔵庫などに積極的に付けてきています。しかし、他のメーカーはシャープほど熱心ではありません。理由は、Wi-Fiシステム搭載するとコストがかかるためです。そしてそれは、シェアアップできない限り、家電の単価が高くなることを意味します。

 現在、ダイキン工業が、Wi-Fiで管理できるよう無線LANアダプターを別売りしています。約1万円。少々お高く感じられもしますが、家電メーカーは、石橋を叩いて渡るくらい、念入りに品質確認しないと、トラブルが多く出ます。これと同等のモノを家電に内蔵させた場合、半額の5000円位価格を上げることになることが予想されます。また電気代もかかります。

 仮に5000円/台、値段が上がることになるとすると、10個の家電の消費電力量を計ろうとすると、5万円プラスになります。5万円あると中級の炊飯器が買えますし、夏場エアコンをガンガンかけても、お釣りがきます。つまり投資をした分は、なかなか回収できないということです。

 「節約」は、暮らし雑誌などでも特集は組まれますが、どちらかというとゲーム的な要素があるから面白いのであり、ビジネス的に収支を問うと面白くないです。国の日本のエネルギー問題を解決するためにというお題目は、よくわかりますが、そのためにHEMSを導入するというのは、我々庶民にとって、極めてハードルが高い話しです。 

 また今実用化されているホームシステムは、家電のWi-Fi対応を前提として組まれていません。ネットとのやりとりはWi-Fiでするとしても、家電へはホームシステムのコントローラーが、リモコンでも使われている赤外線で指示を出します。ご承知の通り、赤外線通信で家電が持っている消費電力情報、家電内のセンサーが捉えた様々な情報を得ることはできませんので、双方向でなく、片方向ではありますが、現在、現実的なホームシステムとして、じわじわ認知され始めている状態です。

1つのデータから分析できないか

 HEMSは一つ一つの家電から情報を手に入れようとしましたが、そうしなくても、「各家電の消費電力を求めることができるのでは?」と考えた人がいます。分電盤の電流を分析し、各家電の状況を把握しようという考え方です。

 例えば洗濯機。強力モーターに大きなドラムを付けた構造です。実は洗濯機のモーターは、エアコンのモーターと電流波形が違うのです。要するに家電は、カテゴリー毎に、違う電流波形を持つということです。

使用電力は、家電の総和で示される 写真を拡大

 家庭の電気は全て分電盤から供給されます。この分電盤の電流を分析することにより、今、どの家電が、どの位電力消費しているのかが分かるという寸法です。これがインフォメティスの機器分離技術です。同社は英国の研究所を中心に、ケンブリッジ大学、東京大学と共にこの技術の研究開発をしています。

 そして東電PGは、送配電やスマートメーターによる計測など電気事業で培った安心安全な電気の運用技術を有しています。この2つが合わさったところで、ビジネスをしようとしているのが、エナジーGWです。この各家電の消費電力がわかるサービス名は、「うちワケ」。

うちワケのスマホ画面 写真を拡大

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