チャイナ・ウォッチャーの視点

2018年8月24日

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高田勝巳 (たかだ・かつみ)

株式会社アクアビジネスコンサルティング代表

株式会社アクアビジネスコンサルティング 代表取締役。拓殖大学で中国語を専攻し、1984年より1986年まで中国の遼寧大学、北京大学での留学を経て、1987年に当時の三菱銀行に入行。1993年より同行上海支店開設のために上海に赴任。1998年に同行を退職後、上海で独立し、それ以来上海を拠点としたコンサルタントとして活躍。2002年より現職。この間、多くの日中間のビジネスにコンサルタントとして関与、最近は日系企業の顧客以外にも中国企業の対日投資並びに技術導入も支援している。中国の第一財経テレビ、香港のフェニックステレビの時事討論番組のコメンテーターとしても活躍している。

 最近国際的に活躍する中国の民間企業のオーナー、経営者たちと米中貿易戦争について意見交換する機会があり面白い話を聞けたので読者の皆様とシェアしたい。

 私自身ここ数年中国から米国向けの機械設備の輸出関わっており、米国の代理店と販売体制について合意した途端に米中の貿易戦争にぶつかってしまい、そのビジネス自体が頓挫しているので、まさに他人事ではない問題である。

(Nerthuz/GettyImages)

 さて、中国の企業家たちはどのように認識し、とらえているのか、まず、話を聞いたのはいつも意見交換をするゴルフ仲間のエコノミストのA氏。最近彼多忙で世界を飛び回っており、なかなか一緒にゴルフできないので、私の上海の自宅に招待して、私の手料理と白ワインで一杯やりながら話を聞いた。

 彼はもともと自由貿易論者で中国の国営セクターと太子党周辺の権益を民間の開放することが中国の真の発展につながると主張しているので、本件についても彼の主張につながる話になった。

  1. まず、今回の中米貿易戦争は、別に習近平になったから起こったというものではない。中国も西側色並みに市場を開放するという前提で、WTOに加盟して、中国が外国において同等の待遇を享受しているのに、中国は、相変わらず、西側色並みに外資に対してオープンでないし、国営、公共セクターの入札で実質外資を排除するなど、アンバランスな状況が続いていた。
  2. また、中国は政府が市場を規制する側でもあり、同時にプレイヤーでもあるので、外国企業にとっては、まともに競争しても勝ち目はないという不満もあったのではないか。
  3. 本来、WTOの加盟国がもっと中国に文句を言うべきであったが、日本とEUは中国に文句を言う力はないのではないか。だとすると、猫に鈴をつけるのは、米国しかないということであろう。
  4. では、なぜクリントン、オバマは言わなかったのか、それはプロの政治家だからではないか。世の中の不合理、不公平に慣れているどれほど敏感ではない。それに対し、トランプは、人気取りといえばそれまでだが、そもそも彼は根っからのビジネスマンだから、とにかく、自分がアンフェアな立場でディールすることが許せない、そのような背景があるように感じている。
  5. 中国は、最初、これまでのように米国から大口の買い物をしてバランスを改善すればなんとかなると高を括っていた感があるが、それは、先に述べた、米国の本源的な不満の解決にはならない。
  6. 人民元安誘導も限りがある、25%の関税というのは絶妙な比率で、10%の関税であれば、人民元を15〜20%安くすれば相殺できるが、25%の関税だと40〜50%の人民元安が必要となる。輸入インフレを考えればそれはとてもできることではない。
  7. そうなると中国は、米国に対して政治的ディールで米国と妥協するか、国内市場を解放するしかない。国内市場を解放すれば外資にもメリットはあるが、最終的に最大の受益者は中国の民間企業と消費者であると考えるので、中国の成長エンジンになる。
  8. 中国市場の開放には、国営セクターと太子党周辺の権益の再調整が必要となり、習近平のリーダーとしての資質が最大限に発揮されることを期待している。最近、香港メディアなどで、習近平が経済的な失策で立場が微妙になっているとの言論があるが、彼以外に既得権益集団を調整し、この難題を解決できるリーダーは今のところ中国に見当たらない。
  9. 今回の貿易戦争で、中国からの輸出が減って困るのは米国ではないかという私の問いに対しては、気の利いた先は、すでに第三国経由で米国に輸出していて急場をしのいでいる。時間の問題で、そうした先は東南アジアなどに生産を移転するはずなので、結果、米国は何も困らないはずと。

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