海野素央の Love Trumps Hate

2018年9月18日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

17年目の追悼式典(筆者撮影、以下同)

 今回のテーマは「911追悼式典」です。米国は2001年に2977人の犠牲者が出た同時多発テロから17年を迎えました。各地で9月11日、追悼式典が開催されました。テロ事件現場であるニューヨークのグランドゼロでは、国歌斉唱後、遺族代表によって犠牲者の名前がアルファベット順に一人づつ読み上げられました。

犠牲者の遺族用ゲート

 世界貿易センタービル北棟及び南棟に航空機が激突した時間になると、氏名読み上げを一旦止めて、弔鐘とともに黙祷が捧げられました。読み上げる遺族代表の中には17歳の少女がおり、「父親には一度も会ったことはないけれど、パパ、愛しているわ」と語っていたことが印象に残っています。

 ドナルト・トランプ米大統領は、過去に「同時多発テロが発生する前はダウンタウンマンハッタンの中で私が所有するビルが2番目に高かったが、テロ後、一番高いビルになった」とコメントをしています。犠牲者の遺族に対する配慮に欠ける発言であることは言うまでもありません。

犠牲者の名前を読み上げる遺族代表の少女

 本稿ではグランドゼロでの追悼式典の直前に出会ったプエルトリコ系米国人の遺族の声を中心に紹介します。

消えぬ悲しみ

 当然ですが、グランドゼロでの追悼式典は犠牲者の遺族や友人のみに限られ、観光客を含めた一般人は出席できませんでした。「911記念博物館」も一般公開されておらず、遺族や友人のみが入場許可を得ました。

 そこで遺族用のゲート付近に立って遺族を探し、インタビューを行うことにしました。

ロビー・ハウリー(58)

義理の姉と猫が印刷されたバッジをつけて追悼式典に出席したロビー・ハウリーさん

 白人女性のハウリーさんは、献花のバラと星条旗を持参してゲートに向かって歩いていました。彼女は胸に、女性と猫が印刷されたバッジをつけていました。

「2001年から追悼式典に出席しています。私は義理の姉を亡くしました。彼女は当時50歳でした。17年が過ぎましたが、悲しみは消えません。毎日悲しんでいます。彼女は猫と小鳥が大好きでした」

アニー・マルドネイド(71)

献花を持参して追悼式典に出席するアニー・マルドネイドさん

 マルドネイドさんも同様に、献花のバラを持って遺族用のゲートに向かっていました。

「私は甥を亡くしました。甥は当時27歳でした。南棟の105階で仕事をしていました。17年前と気持ちは変わりません」

 筆者がアプローチをした遺族の中には、もちろんインタビューを拒否する遺族もいました。

「私はボーイフレンドを亡くしました。彼は30歳でした。私は911について語りたくありません」

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