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2018年10月18日

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新田日明 (にった・あきら)

スポーツライター

スポーツライター。

ボストンレッドソックス時代の松坂(AFLO)

 中日ドラゴンズの新監督に球団OBの与田剛氏が決まった。チームは今季5位と低迷し、6年連続のBクラスにあえぐ。第2、3回WBCに参加した日本代表・侍ジャパン、そして今季まで3年間に渡って楽天で投手コーチを務めた新指揮官には投手陣再建の期待がかかる。中でも今季、新天地で今季6勝4敗、防御率3・74をマークし、復活の狼煙をあげた松坂大輔をどのように〝操縦〟していくのかも注目ポイントだ。

 一見接点がないようにも思えるが、2009年開催の第2回WBCでは侍ジャパンのエースだった松坂を投手コーチとして側面からサポート。当時絶頂期にあった怪物の良き理解者として実は当時、かなり密な関係にあった。来季から現場を離れてシニアディレクターに就く森繁和前監督同様、ベテラン右腕を気持ちよく投げさせながら勝ち星を上積みさせるプランを今から頭に描いているはずである。

ソフトバンク時代との違い

 さて、その松坂は今季のチームで周囲の期待以上に貢献した。福岡ソフトバンクホークスでは昨季まで3年間在籍しながら一軍で中継ぎとして1試合のみの登板に終わり、防御率18・00。右肩痛のコンディション不良に悩まされたことで散々な内容に終わったものの、昨オフはソフトバンクからのコーチ就任要請を断って現役続行の道を模索した。ここで手を差し伸べたのが中日だった。

 かつての西武ライオンズ時代から昵懇の森前監督と編成部に席を置く友利結氏が中心となり、今年1月の入団テストを経て入団。「通用するはずがない」とささやかれた下馬評を覆し、不死鳥のごとく蘇った。

 今季は他の先発陣と違って登板間隔を大幅にあける〝ゆとりローテ〟の特権が与えられている。だからといって、チームの中で浮いた存在になっているわけではない。むしろ、完全に打ち解けている。マウンド外では若手投手陣たちから質問攻めにされながらも、嫌な顔ひとつ浮かべることなく自分の経験を基に適切な助言を送っているのは今や中日での日常的な光景だ。肩書きこそ付いていないが、いわば兼任コーチのようなポジションと言っていい。つい、1年前までは考えられなかった光景である。

 ソフトバンク時代はチームの戦力が充実していたこともあり、移籍当初から12球団ナンバー1ともっぱらだった先発投手枠に割って入るのは困難と大半の人たちが予想していた。しかも、どちらかといえば4年前のソフトバンク入りがフロント主導で進められたプランだったのは多くの球界有識者が知るところだ。実際のところ当時の現場サイドは松坂の獲得を望んでいなかったともささやかれていた。だから〝飼い殺し〟になったとしても決して不思議はなかったのだ。

 そういう雰囲気を自らも感じ取っていたからこそ、この頃の松坂にはどことなく暗い表情が漂い、野球を楽しめていないように見えた。ソフトバンクに移籍後初めてチームの春季キャンプに参加した際もほとんど笑顔がなく、どこか窮屈そうで居心地の悪さを覚えているように感じられたのは松坂を昔から良く知る関係者ならば皆同じ思いだったはずである。

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