中東を読み解く

2018年10月18日

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家宅捜索に入られたサウジ領事館(REUTERS/AFLO)

 サウジアラビア人ジャーナリスト失踪事件はおぞましい殺害のもようや、ムハンマド皇太子の警護隊が犯行を主導していた実態が次々に暴露され、トランプ米政権も事件の幕引き用にサウジが準備したシナリオに賛同することが難しくなってきた。事件は再び混とんとした様相を呈し始めた。

「死にたくなかったら黙っていろ」

 米紙ニューヨーク・タイムズや英中東専門サイト「ミドルイースト・アイ」(MEE)などによると、失踪しているジャマル・カショギ氏は10月2日午後1時過ぎにイスタンブールのサウジ総領事館に入ってすぐ、待ち伏せしていたサウジ暗殺部隊のメンバーに拘束された。この情報はトルコ当局が入手している事件当時の音声録音によるものだ。

 カショギ氏はモハマド・オタイビ総領事の執務室に連行され、さらに隣の書斎のテーブルの上に固定された。同氏は殴打などの暴行を受けた上、サウジ治安機関の検視部長であり、同国法医学学会議長のサラモハマド・ツバイギによって指を何本か切断された。恐ろしい悲鳴が響き渡った。このためツバイギはカショギ氏に薬物を注射、その後、首を切断するなど遺体をばらばらにした。解体には7分かかった。

 オタイビ総領事が「そんなことは外でやれ。私を問題に巻き込むな」と言うと、暗殺部隊の1人が「サウジに帰国した時、死にたくないなら口を閉じていろ」と脅した。オタイビ総領事は17日、トルコを出国し、サウジに帰国した。

 ツバイギは解体作業をしながら、イヤホンを付け、「私はこんな仕事をする時は音楽を聴く。君たちもそうすべきだ」と他の暗殺部隊メンバーに言ったという。ツバイギはかつて、現場での検視のため、移動検視車の設置を提案、巨大なトレーラーを検視車として導入した実績がある。

 米CNNなどによると、サウジ側は「カショギ氏がサウジ捜査官の尋問中に誤って死亡した」とのシナリオを準備し、幕引きを図ろうとしているとされるが、音声録音は暗殺部隊が最初から同氏を殺害する目的だったことを示しており、尋問中に死亡したとするにはあまりにも無理がある。

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