韓国の「読み方」

2018年10月22日

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澤田克己 (さわだ・かつみ)

毎日新聞記者、元ソウル支局長

1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15~18年論説委員(朝鮮半島担当)。18年4月から外信部長。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、『韓国新大統領 文在寅とは何者か』(17年、祥伝社)、『新版 北朝鮮入門』(17年、東洋経済新報社、礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著)など。訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。

超競争社会の韓国企業では、高い倍率をくぐり抜けて大企業に入社しても生き残るのが大変(写真はサムスン本社:picture alliance/アフロ)

 日本政府が外国人労働者の受け入れ拡大に向けて新たな在留資格を作ろうとしている。安倍晋三首相は「移民政策ではない」と強弁するが、実質的な政策転換だ。労働力不足という現実を直視した政策を作らねばならないのは当然だが、日本社会には気になる思い込みが未だにあるように見える。日本が外国人労働者を大量に受け入れるといえば「多くの外国人が殺到するはず」というものだ。今や、そんな時代ではないのに…。

 少なくとも金銭的な面での日本の魅力は大きく減少している。先日、韓国の外交官と話した時にそれを実感させられた。若年失業率の高さが社会問題となっている韓国では、日本をはじめとする外国での就職を数年前から政府が後押ししている。日本に駐在する外交官として日本企業への就職支援を行わなければならない彼は、こう言ったのだ。

 「日本企業は初任給が安いでしょ。日本で労働力不足だという職種は、その中でもさらに給料が安いことが多い。韓国企業の方が高い給料を出すから、韓国の若者はその水準を考えながら就職先を探そうとする。ミスマッチが多くて苦労するんですよ」

日本で就職する韓国人は急増しているが…

 韓国の青年(15~29歳)失業率は10%前後で推移しており、大きな社会問題となってきた。金大中政権以来の新自由主義的な経済政策の下で超競争社会となり、企業が即戦力しか採用しなくなったことも背景にあるのだろう。韓国政府は雇用を増やすよう企業に圧力をかけているものの思うような効果を上げることはできず、朴槿恵政権が海外での就職支援を本格化させた。現在の文在寅政権もこの路線は踏襲している。

 日本ではちょうど、労働力不足が深刻化していた。韓国人にとって日本は、里帰りしやすい隣国であるうえ、文化的な共通点も多い。韓国語と日本語は文法が似ているから、言葉も学びやすい。一方で日本企業側では、韓国人の若者は優秀なうえに日本文化への適応力が高いと評価される。そうした条件が重なったことで、日本で就職する韓国人の若者は急増した。

 厚生労働省によると、日本で働く韓国人(特別永住権を持つ在日韓国人以外)は昨年10月末時点で5万5926人。2012年10月末時点は3万1780人なので、5年間で76%増えた。ただし、外国人労働者の総数もこの間に68万人から128万人へと9割近く増えているので、韓国人の増加率が特に高いわけではない。日本で労働力不足が深刻さを増しているうえ、世界市場に進出しなければ生き残れないとグローバル人材の獲得が叫ばれ、さらには韓国政府が強く海外就職を後押ししている割には増えていないと見ることもできそうだ。

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