食の安全 常識・非常識

2018年11月6日

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松永和紀 (まつなが・わき)

科学ジャーナリスト

1963年生まれ。89年、京都大学大学院農学研究科修士課程修了(農芸化学専攻)。毎日新聞社に記者として10年間勤めたのち、フリーの科学ジャーナリストに。主な著書は『踊る「食の安全」 農薬から見える日本の食卓』(家の光協会)、『食の安全と環境 「気分のエコ」にはだまされない』(日本評論社)、『効かない健康食品 危ない天然・自然』(光文社新書)など。『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学』(同)で科学ジャーナリスト賞受賞。「第三者委員会報告書格付け委員会」にも加わり、企業の第三者報告書にも目を光らせている。

おなじみの「遺伝子組換えでない」は消えるかもしれない(margouillatphotos/iStock/Getty Images Plus)

 遺伝子組換え食品の表示制度が数年後、変わることになりそうです。現在、変更案がパブリックコメントにかけられています(11月8日まで)。パブリックコメントというのは、国の案について国民がだれでも意見を伝えることができる機会です。

 遺伝子組換えの表示はこれまで、批判の的でした。消費者庁は見直しを目指し「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」を設置。専門家や消費者団体代表などが検討して昨年度、報告書をまとめました。これを基に、新制度案は作られています。

 案はどのようなものなのか。新しい制度で批判は解消されるのか。ポイントを整理してみました。

ポイント1:遺伝子組換え表示は、
従来も新制度も、安全性を識別する手段ではない

 現在の表示制度はとうもろこし、大豆、なたねや綿実など8つの遺伝子組換え農産物とそれを原材料とする33の加工食品が対象です。これらは、専門家による安全性の審査を経て流通が認められており、従来の非組換え品種と同等に安全です。

 ただし、審査を経て流通していても、嫌う人はいます。嫌う権利も当然、あります。そこで、表示制度は消費者に選択の権利を保障するために運用されています。安全性を識別するためのものではなく、新制度になってもこのことは変わりません。

遺伝子組換えの表示義務対象品目(8農産物と33の加工食品)
小麦は、世界的に遺伝子組換え品種が商用化されていない。野菜の中にはナスなど他国で組換え品種が生産販売されているものもあるが、日本では安全性評価が申請されておらず、流通することはない

<私見>

 一部の科学者や市民団体等が「遺伝子組換え農産物は危険だ」と写真や動画を見せ、反対運動を展開していますが、おおかたの科学者には支持されておらず、安全性を示すエビデンスは多数あります(このあたり、反対派は怒り心頭の記述でしょうが、安全性のエビデンスの解説を書き始めたら何千字あっても足りませんので、今回は見送ります。参考文献としていくつかを挙げておきますので、関心ある方はご覧ください)。

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