野嶋剛が読み解くアジア最新事情

2018年11月7日

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台湾で次期総統選の行方を大きく左右すると見られる統一地方選が11月24日に迫っているが、与党・民進党の敗北は不可避な情勢だ。4大都市である台北、新北、台中、高雄のすべてを落とす可能性があり、特に民進党優勢の地盤で安泰と見られた高雄で敗北すれば「大敗」とみなされ、蔡英文総統の再任にも黄信号がともる。民進党と野党・国民党は高雄を決戦地とみて全力を挙げて勝利を掴む構えだ。民進党にとって最後に残された「天守閣」高雄を、国民党が攻め落とすかどうか、という光景を思い起こさせるほど、民進党は厳しい局面に追い込まれている。

11月5日、高雄市長選で韓國瑜・国民党候補の大幅リードを報じる台湾の新聞

「番狂わせ」が起きそうな高雄市長選

 統一地方選では地方の首長や議員を選び、住民投票も行われるが、注目されるのは6つある直轄市のトップを争う選挙の行方だ。過去の台湾政治では、この統一地方選で勝利した政党が2年後の総統選も有利に戦う流れになっている。

 先週、筆者が半年ぶりに訪れた台湾の高雄では、ムードが一変していた。南部は民進党が伝統的に強く、南部の最大都市である高雄市の市長選では、過去、民進党が5連勝を遂げており、本来、この選挙でも楽勝と思われていた。

 最近まで10年以上も高雄市長に君臨していたのは民進党随一の実力者で人気者の陳菊氏。もし敗北すれば、いま総統府秘書長として蔡英文政権の重しとなっている陳菊氏の威信も傷つき、支持率3割台に低迷する政権の浮揚力は失われ、2020年の総統選候補に蔡英文氏がふさわしいかどうか党内議論が始まるだろう。

 この高雄で番狂わせを起こそうとしているのが、国民党の元立法委員の韓國瑜氏だ。外省人で高雄での政治経験もなく、最初は泡沫扱いであったが、若者を活用し、SNSを駆使したユニークな選挙戦を展開。保守的だと見られがちな国民党らしくない、と評判を集めてあれよあれよという間に「韓國瑜」ブームを巻き起こした。ほかの選挙区にも好影響を及ぼし、国民党全体の底上げを成し遂げつつある。

高雄市長選に立候補している国民党の韓國瑜氏

 現状で高雄はまだ五分五分だと私は見ているが、各種世論調査では、すでに韓氏のリードを軒並み伝えている。民進党の候補は、蔡英文氏の信頼も厚い次世代のリーダーと目される陳其邁・元立法委員だが、初動での油断が響いているのか、選挙チームのまとまりが欠けていると党内からも心配の声が出ている。

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