スウェーデン社会に根付く
「サムボ」という制度
スウェーデンに住んで実感したのは、こちらの人には結婚に対する強い思いがないということ。この国は、結婚率が比較的低い西欧諸国の中でも特に低い国のひとつなのです。そしてその一番の原因に、社会に深く根付いた「sambo(サムボ)」という制度が挙げられます。これは、スウェーデンの結婚文化を語るうえで欠かせない、そして日常よく耳にする言葉です。日本語に訳すと「同棲、事実婚」でしょうか。同じ家に住む恋愛関係のカップルを指し、「サムボ法」という法律でしっかりと保障された地位です。財産分割や相続権の点で婚姻法と異なる以外は、法律婚のカップルと違いがありません。一応、結婚前のステップとされているようですが、ずっとサムボ関係のままでいるカップルもたくさんいますし、たとえ子供が生まれて家族になっても結婚しないカップルは少なくありません。ですから、父親と母親が別々の苗字を持つ、なんていう子供はごく普通のこと。
これは、結婚を人生の大きな節目の一つとして捉える私達日本人からみたら、異質な文化ですよね。私も、親から幾度となく、あなたは日本人なのだから、と説得されますし、友人からも、まだ結婚しないのか、とよく質問されます。それもそのはず。私が婚約したのはもう4年半も前のことなのですから。当初は私が一番結婚に近かったのに、気づけは周りには結婚して子供まで生んでいる友人が多くなりました。それに加え、他の日本人・スウェーデン人カップルと比べてみると、婚約後やはり1年ほどでご結婚される方が多いようで、私達は少し変わった例なのかもしれません。
しかし、では実際私がどう思っているのか、というと話が少し変わってきます。
当然私も、日本人の常識としていずれはきちんと結婚したいと思っています。私の彼も幸い結婚に対する意識はありますし、私達は婚約といった一歩手前のステップも踏んでいるので、残る問題は「その時」だけなのです。
ですが、一方で、結婚とサムボと何が違うのだろう…と思うこともよくあります。先述しましたが、スウェーデン社会では結婚していようがサムボでいようが、普段の生活には全く支障がなく、偏見もありません。つまりは文字通り、サムボは事実上結婚しているのです。むしろ、サムボ生活を振り返ってみると、この文化に心から賛同します。日本では今でも同棲生活をあまり良い目で見ない方もいらっしゃいますが、結婚前にしばらく一緒に住むとお互いを一層理解できるものです。私自身の経験からも言えますが、同棲してみないと分からないようなことってたくさんありますから。婚約の流れに乗って結婚し、その後初めてパートナーとの生活にショックを受けるのでは遅い。だから私は、精神面はもちろん、社会面や経済面など全てにおいて、二人が納得いくまでこうしてサムボでいて正解だと思っています。
プロポーズを待って20年!
普遍的かと思っていた結婚観でさえ、独自の常識や観点がある異国では当然違ってくるのです。今回のテーマは、私が出会った数々のカルチャーギャップの一つ。今後も、日本ではなかなか知ることのできないスウェーデンの姿を、私の目を通してご紹介していきたいと思います。
最後に一つ、可愛らしい小話を。
こちらの友人から聞いた話なのですが、彼女のお母さんは20年以上も毎年、パートナー(友人のお父さん)からプロポーズされることを一年の目標としているそうです。なんだか、これもこれで微笑ましくありませんか。
【連載】スウェーデンで生きる 海外移住だより
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