世界最大の展示会で露呈した
日本家電の不安


前田 悟 (まえだ・さとる)  金沢工業大学客員教授

(株)SOW他複数企業特別顧問。1951年岡山県生まれ。ソニーで、世界初の無線TVエアボード、ロケーションフリーTVなどを開発。07年にケンウッドに移籍し、2008年JVC KENWOOD Holdings㈱執行役員常務に就任、2011年6月退任まで技術戦略、新規商品開発を担当する。2010年7月から、金沢工業大学客員教授、現在は複数企業の特別顧問も行っている。

家電の航路

「この人はソニーらしいなと思うような方ってご存知ですか?」と、iモードの生みの親である夏野剛さんに尋ねて教えてもらったのが、前田悟さんだ。
ソニーからJVCケンウッドに移籍していた前田さんを訪ねると、いきなり「AV機器ならぬ、AV危機」について時間を忘れて語ってくれた。
「僕は、30を過ぎて人から仕事をもらったことはない」「やれることはいくらでもある」……、前田さんの言葉に帯びる熱に、いつの間にか浮かされてしまった。
日本の家電業界はこの先どうなるのか? その航路を前田さんに示してもらうことにした。

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例年のごとく1月6日~9日、世界最大の家電機器展示会であるCES(Consumer Electronics Show)が、米・ラスベガスで開催された。今年は出展者数、来場者数とも大幅に増え、盛況であった。そのなかで印象に残ったのは、韓国勢(サムスン、LG)と日本勢との差が開き、さらにベンチャー企業の方が、魅力的な新しい提案が多く、先を見た開発を行っていたことだ。

 韓国勢は展示している商品のカテゴリー数、そのなかの商品点数も日本勢に比べて格段に多かった。白物家電から、スマートフォン、IT関連、タブレット型端末、TV(3D、スマートTVを含む)、カメラ等のAV機器、電子ブックなどまで総合的力があり、将来展開する方向性、姿というものが見えた。加えて、ワイヤレス化や超薄型TVも、これまで通り連続的に進めていた。

 特にLGは、展示の仕方が優れていた。単に羅列しているだけではなく、それぞれ使うシーンを想定したコーナーを設けていた。例えば、3DTVの展示はシネマコーナーに特化していた。何でもかんでも3D映像とアピールしてもユーザーに届いていないことは、3DTVの販売が伸びていないことが証明している。映画に限定したのは、利用シーンを考えているからこそで、商品の戦略が見えているということだ。

 それに対して日本勢は、3D関連(TV、デジカメなど)と、スマートTVへの偏りが目に付いた。これまで日本勢が主導して進めていた超薄型TVや、ワイヤレス関連の商品などは、ほとんどなくなっていて、一貫性のなさを感じた。目先の流行り廃りにとらわれ過ぎていて、見本市という、家電メーカーとして自らの将来の方向性を示す場所であるにもかかわらず、それが見せられない。これは、やはり商品企画、技術開発の一貫性、投資努力の欠陥によるところが大きい。

挑戦をやめて後追いに慣れた日本

 私は毎年、通常のメディアには公開されていないプライベートブースに招かれる。いくつかを紹介する(守秘義務の問題で詳細は述べられないが)と、超省電力のBluetoothでボタン電池が1個あれば4年以上持つリモコンや、3次元センサーと組み合わせた健康補助商品。さらに、無線技術を持っているベンチャーは、彼らの技術を取り入れた某大手量販店(未発表ではあるが)の、非常に魅力的なTVを展示していた。スマートフォン、タブレット型端末も多くの台湾EMS(電子機器の受託生産)企業などが紹介しており、日本の家電メーカーにはない新商品、技術の提案が多々あった。

 現在の日本勢は、独自商品を生み出す挑戦をしないままに、フォロー(後追い)することに慣れてしまっているのではないだろうか。短期的な利益を追い、せっかくの芽を摘んでしまう。特に韓国勢は、日本勢をフォローしてきただけに、皮肉にもこの危うさに気付いている。サムスン、LGは、毎年いくつのInnovation AwarDをとったかということを重要視しており、その実績をブースにも展示していた。常にInnovationを考えることを経営陣が目標に掲げているということだ。
 

◆WEDGE2011年3月号より

 

 


 

 

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「家電の航路」

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前田 悟(まえだ・さとる)

金沢工業大学客員教授

(株)SOW他複数企業特別顧問。1951年岡山県生まれ。ソニーで、世界初の無線TVエアボード、ロケーションフリーTVなどを開発。07年にケンウッドに移籍し、2008年JVC KENWOOD Holdings㈱執行役員常務に就任、2011年6月退任まで技術戦略、新規商品開発を担当する。2010年7月から、金沢工業大学客員教授、現在は複数企業の特別顧問も行っている。

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