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2011年9月14日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

経済ジャーナリスト

1962年東京生まれ。1987年早稲田大学政治経済学部卒業。日本経済新聞で証券部記者、同部次長、チューリヒ支局長、フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長・編集委員などを務め、2011年3月末で退社、独立。現在、経済政策を中心に政・財・官を幅広く取材、各種メディアに執筆するほか、講演やテレビ出演、勉強会の主宰など幅広く活躍している。オフィシャルHP(http://isoyamatomoyuki.com/)

著書に『2022年、「働き方」はこうなる』(PHPビジネス新書)、『理と情の狭間 大塚家具から考えるコーポレートガバナンス』(日経BP)、『国際会計基準戦争 完結編』(日系BP)、『ブランド王国スイスの秘密』(日経BP)など。共著に『オリンパス症候群 自壊する「日本型」株式会社』(平凡社)、『株主の反乱』(日本経済新聞社)などがある。

早稲田大学政治経済学術院(大学院)非常勤講師、上智大学非常勤講師。ボーイスカウト日本連盟理事。静岡県ふじのくにづくりリーディングアドバイザーも務める。

日経ビジネスオンライン(日経BP)、現代ビジネス(講談社)、フォーサイト(新潮社)、月刊 WEDGE(ウェッジ)、月刊 エルネオス(エルネオス出版)、フジサンケイビジネスアイ(産経新聞社)などに連載コラムなどを持ち、定期執筆している。

人口が東京都の半分にも満たないシンガポールは、世界中からヒト・モノ・カネを集め、
一人当たりのGDP額で日本を抜き、アジア1位に躍り出ようとしている。
成長の起点となったのは、より豊かな生活の質を追い求める明確な国家ビジョンだ。
日本にも、まだまだ潜在力はある。諦めるのは早い。

 東日本大震災からの復興に向けて、政府の復興構想会議が6月末に「復興への提言~悲惨のなかの希望~」をまとめた。その中に、こんな一節がある。

 「震災を契機に、生産拠点を日本から海外に移転するなど、産業の空洞化が加速化するおそれがあり、国内の立地環境の改善が急務である。被災地の復興とともに、日本経済の再生に同時並行で取り組む必要がある」

 まさに正しい指摘である。被災地の復旧・復興を進めるには日本経済全体を同時に立て直さなければならない。そのためにはまず、グランドデザイン、ビジョンが必要だ。復興構想会議の大きな役割の一つは、そうした国家ビジョンを示すことだったはずだ。だが、今回の提言で、日本経済再生に関する部分は具体性に欠け、今後の日本のビジョンと呼べるだけの全体像は描かれず終いだった。

 「失われた20年」と呼ばれるバブル経済崩壊後の日本の低迷は、そうした国家ビジョンを喪失した故の帰結だったとみていい。輸出で外貨を稼ぐことで経済成長を成し遂げるという第二次世界大戦終戦からの“復興モデル”が、バブルの崩壊と共に消え失せたのだが、その後の針路をいまだに見いだせていない。東日本大震災を経て、今こそ明確な国家ビジョンを描くことが必要になっている。

 世界の多くの国が明確なビジョンを持ち、国づくりに力を注いでいる。そんな一例として、今回はシンガポールを取り上げることにしよう。

世界中からヒト・モノ・カネを集める

 今、熱帯の小国シンガポールは、未曾有の好景気に沸いている。町中いたるところで建設ラッシュが続き、中国をはじめ世界中から観光客が押し寄せている。街中は若者の姿が多く、活気に溢れている。

 シンガポールの象徴であるマーライオン像が立つ港の対岸には、マリーナ・ベイ・サンズと名付けられた広大な埋め立て再開発地区があり、三本の高層ビルの屋上を、船をモチーフにしたデッキがつなぐ奇抜なデザインが目を引く。デッキにはプールやバーがあり、足下のビルには高級ホテルや「アジア最大」を売り物にするカジノ、ショッピングモールが入っている。また、オペラ座や大観覧車などの娯楽施設が並ぶ光景はテーマパークのようだ。ここ10年ですっかり風景が一変した。

 シンガポールの2010年の実質GDP(国内総生産)成長率は前年比14.5%。同国としては過去最高の伸び率を記録した。リーマンショックの影響で09年がマイナス0.8%だった反動があるとはいえ、猛烈な成長率である。ちなみに11年も5%を超える成長を見込む。

 そんなシンガポールの繁栄は、決して偶然の帰結ではない。世界中からヒト・モノ・カネを集める明確な国家ビジョンを持ち、それを推進してきた結果なのだ。

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