WEDGE REPORT

2019年2月25日

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児玉 博 (こだま・ひろし)

ジャーナリスト

1959年大分県生まれ。早稲田大学卒業。フリーランスジャーナリストとして、大手総合誌、ビジネス誌で活躍。著書に『日本株式会社の顧問弁護士 村瀬二郎の「二つの祖国」(文春新書)、近著に『テヘランからきた男 西田厚聰と東芝壊滅』(小学館)など。

 2018年3月、当時の米国務長官、レックス・ティラーソンはアフリカに過剰な投資を繰り返す中国を次のように非難した。

 「中国の投資はアフリカのインフラ格差を是正するのに有益かもしれない。しかし、不透明な契約や略奪的な融資、買収が横行する取引がアフリカを借金漬けにし、主権を弱体化させ、自立的な成長を阻んでいる」

 しかし、米国の強い調子の非難にもかかわらず、中国は投資の勢いを緩めない。

 やはり2018年の9月、中国・北京で開かれた中国・アフリカ協力フォーラム(FOCAC)で国家主席、習近平は、向こう3年間でアフリカに600億ドル(約6兆6000億円)の経済支援を行うことを約束。中国のアフリカ支援額は米国のそれを遥かに上回っている。その一方で、最貧国の債務返済を一部免除することも併せて発表し、米国の非難に配慮を見せた。

 ジブチでも事情は変わらない。先に触れた鉄道だけでも40億ドル(約4400億円)の資金が投じられている。この2年間だけをとってみても、融資額は14億ドル(約1500億円)。ジブチのGDP(国民総生産)の4分の3以上に当たる金額だ。

 総面積48平方キロメートル(羽田空港の4倍超)、35億ドル(約3900億円)もの巨費を投じて中国の企業群が建設、そして運営を行う予定なのがアフリカ最大の「ジブチ国際自由貿易区」である。2018年の夏に行われた一部完成を祝った式典ではジブチ大統領、イスマイル・オマル・ゲレも出席し、

 「自由貿易ゾーンは国際通商貿易におけるジブチの地位を向上させる」

 とその未来に強い期待を寄せた。

 黄色く塗られた正面ゲートにはジブチ国旗と中国国旗がたなびいていた。そのゲートの左側には、ほぼ完成しているホテルがその威容を誇っていた。まだほとんどが手つかずといっていいこの自由貿易ゾーンだが、その規模は想像を絶する。車で走ってみれば、その地区全体が地平線のようだ。

2018年7月に第一期エリアの一部がオープンした自由貿易ゾーンの正面ゲート。計画がすべて完成するとアフリカ最大となる(写真・Wedge、以下同)

 砂漠の中をエチオピアに延びる幹線道路は、両国を行き交う大型トラック、タンクローリーなどがひっきりなしに走っている。この道はジブチの生命線だ。電力はエチオピアから送られ、水もエチオピアに依存している。エチオピアなしにジブチは生きていけない。それと、同じように中国の投資はジブチにとって欠かせないものになりつつある。

 見方を変えるならば、中国マネーはアフリカを、ジブチを麻痺させる麻薬に似ているかもしれない。

 「全て中国のもの。もうジブチのものじゃない」

 あるジブチ政府の高官はこんな自虐的な言い回しでジブチにおける中国の進出ぶりを表現してみせた。

 48平方キロメートルという途方もない広さを占める自由貿易ゾーン。中国の投資はこれにとどまらない。この自由貿易ゾーンから連なるジブチの優良な港湾地域は中国資本によって、巨大開発が急ピッチで進められている。
 
「中国交建」「中国中綿建設集団」「中建信条」……、工事現場は建設を請け負っている中国の企業群の名前で埋め尽くされている。まさに〝全て中国のもの〟なのである。

自由貿易ゾーンの辺り一帯には中国企業の工事現場が点在する

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