中国の習近平国家主席が主導する「一帯一路」は驚異的なスピードと規模で建設が進む。対米貿易戦争が激化する中、海のシルクロードは中東・アフリカ、欧州へと延びるチョークポイント(水上の要衝)のスエズ運河、地中海を抑えようとしている。
東京23区より大きい「新首都」
エジプトの首都カイロから東へ車を飛ばして約1時間。荒涼とした砂漠の中で、軍出身のシシ大統領が主導する世界最大の人工都市「新首都」の建設が進む。世界で3番目に大きい「アルファター・アラリム・モスク(イスラム教の礼拝堂)」が姿を現した。礼拝の時間になるとこのモスクがテレビで一斉に放映されるため、見学希望者が後を絶たない。
カイロからの大型バス1台、地中海沿岸の都市・ポートサイドからの小型バス3台が駐車していた。入り口にはエジプト軍の兵士が見張りに立つ。「見学」と断って中に入れてもらった。外は強い日差しが照り付けるが、建物の中は大理石がふんだんに使われ、ひんやりとしている。絨毯もふかふかして気持ち良い。40~50人が座り心地を試したり、実際に礼拝したりしている。屋外も含めると1万7000人が同時に礼拝できる大きさだ。
おしゃれな若いイスラム女性の5人グループに「一緒に記念写真を撮って」とせがまれた。日本人は珍しいのだろう。「新首都」に引っ越すかどうかを決めるため、バスに乗ってポートサイドからやって来たという。「すてきなモスク」と5人は目を輝かせた。
カイロの建設会社に勤めるラミーさんは「4年以内に新首都の住宅地区が完成する。週1回、無料で希望者を募って見学ツアーを組んでいる。評判は上々だ。中国やロシア、ドイツの会社は見かけるけど、日本の会社はまだ来てないよ」と言う。募集価格は200平方メートル、3ベッドルーム、3バスルームで214万エジプトポンド(約1330万円)。見学の市民はアッパーミドル(中流階級より上)だ。
集合住宅や戸建住宅の外観は出来つつある。完成まで資金が続かなければ「原野商法」ならぬ「砂漠商法」になりかねない恐れは残る。しかし、イスラム社会ではモスク建設が信用の証と受け止められる。何と言ってもシシ大統領が推進する国家的プロジェクトなのだ。