公立中学が挑む教育改革

2019年3月4日

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多田慎介 (ただ・しんすけ)

ライター

1983年、石川県金沢市生まれ。大学中退後に求人広告代理店へアルバイト入社し、転職サイトなどを扱う法人営業職や営業マネジャー職を経験。編集プロダクション勤務を経て、2015年よりフリーランスとして活動。個人の働き方やキャリア形成、企業の採用コンテンツ、マーケティング手法などをテーマに取材・執筆を重ねている。著書に『「目的思考」で学びが変わる 千代田区立麹町中学校長・工藤勇一の挑戦』(ウェッジ)。

本対談は、書籍『「目的思考」で学びが変わる—千代田区立麹町中学校長・工藤勇一の挑戦』(多田慎介 著)の刊行を記念して行われました。

「生徒たちのために卒業記念講演をしてくれませんか?」――2017年、麹町中学校長の工藤勇一氏は澤円氏へそんな依頼を投げかけた。外資系大手IT企業のカリスマプレゼンテーターが公立中学校で講演する。その奇跡の裏には、偶然の出会いから生まれた2人の共鳴があったという。「当日は僕の失敗体験ばかり話したんです」と語る澤氏。生徒たちだけでなく、多くの保護者からも共感を呼んだという卒業記念講演の裏側を聞いた。

 

みんなはまだ、挫折なんてしていない

工藤:卒業記念講演には特別な狙いがあるんです。都立高校の合格発表を間近に控え、3年生の進路が決定しつつある時期に行っています。

澤:生徒のみなさんが、いろいろな希望や不安を胸に抱えている時期ですね。

工藤:はい。「15歳はまだまだ人生の始まりの地点で、高校受験での失敗などは大した挫折ではないんだ」ということを伝えたいんです。高校は大人になるまでの通過点にすぎない。そもそもみんなが第一志望に入れるわけじゃないんだから、希望する高校へ進めなくてもどうってことないんだよ、と。

澤:とても大切なメッセージですね。

著書『学校の「当たり前」をやめた。』(時事通信社)が教育書として異例のベストセラーとなった千代田区立麹町中学校・工藤勇一校長

工藤:私が意識して講師を選ぶようになってから初めてお願いしたのは、世界的なフレンチのシェフ、オテル・ドゥ・ミクニのオーナー、三國清三さんでした。以前、北海道で三國さんの講演を聞いたことがありまして、「人生で何度も挫折しながら成功へ進んできた」という話に非常に感銘を受けたんです。どうしても生徒たちにその話を聞かせたくて、三國さんに講演依頼の手紙を書いたんです。

澤:僕が卒業記念講演をさせていただいた際にも、自分の失敗体験ばかり話しましたね。そういえばあのときに、とてもびっくりしたことがあって。

工藤:何でしょうか?

澤:講演の後に、その場にはいなかったはずの保護者の方々から、SNSでたくさんメッセージをいただいたんですよ。生徒のみなさんが家に帰ってから講演の様子を伝えてくれたようです。中には「子どもが、学校であったことをこんなに楽しそうに話してくれたのは初めてだった」という声もありました。

工藤:それはうれしいですね。それだけ、子どもたちの心に残るプレゼンだったということですね。

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