世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2019年4月9日

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 「自由で開かれたインド太平洋」にとり、台湾は、地政学的に最も重要な場所の一つに位置し、重要な役割を果たし得る国である。台湾は、米国との関係を強化しながら、インド太平洋への関与を強めている。最近の台湾の動きの中から、2つの出来事を紹介する。

(zoom-zoom/sumos/titoOnz/iStock)

 一つ目は、3月11日にロサンゼルスで開催された米国のシンクタンクLos Angeles World Affairs Council主催の会議における呉釗燮外交部長の演説である。呉外交部長は、米国主導のインド太平洋戦略における台湾の役割について‘Taiwan: An Enduring Partner with the US in the Free and Open Indo-Pacific’と題する演説をした。自由で開かれたインド太平洋が台湾防衛に不可欠であり逆もしかりである、という構図を明確に示した、よい演説であった。その主要点は次の通りである。

・台湾は38年間の戒厳令を経て完全な民主主義を享受するようになり、民主主義の維持と強化に強くコミットしているが、台湾の民主主義を当然のものと思ってはならない。米国の「国家安全保障戦略」は、修正主義勢力(注:中国も名指しされている)が技術、プロパガンダ、威嚇を用いて、世界を我々の利益と価値に反するものに作り替えようとしている、と述べている。こうした注意すべき傾向は、台湾を守ることの重要性を想起させる。

・台湾は、豪、日、米、欧、その他世界中の同じ考えの国々が直面するイデオロギー戦の第一防衛線である。我々は日々、台湾の民主主義を屈服させようとするあらゆる形態(軍事的恫喝、経済的締め付け、外交的攻撃、プロパガンダ等)の中国による活動の強化にさらされている。今年1月2日、習近平は、武力を用いてでも台湾を統一する、と言った。

・中国の言動は、台湾人のみならず、地域の平和と安定について考えを同じくするパートナーの決意をも試している。台湾が中国の手に落ちるようなことがあれば、次はどの国がそうなるか?そんなことが起こらないようにしなければならない。台湾は自らの役割をよく理解している。民主主義が人類にとりより良い道であると世界に示し続ける。民主主義が勝てば台湾も勝つことになる。

・台湾関係法制定40周年を迎え米台関係は史上最も良好である。台湾関係法は強固な米台関係の礎だ。台湾は、米国との関係をさらに強化するとともに、「自由で開かれたインド太平洋」の追求において、考えを同じくする国々の理想的なパートナーを目指す。台湾を守る最良の方法は、台湾を世界にとり不可欠でかけがえのない存在にすることだ。

 もう一つの注目すべき動きは、3月19日に呉外交部長とクリステンセンAIT(米国在台湾協会:米国の対台湾窓口期間)台北事務所長が発表した、米台間の新たな対話メカニズムである「インド太平洋民主的ガバナンス協会(Indo-Pacific Democratic Governance Consultations)」の設立である。

 この新たな対話メカニズムの目的は、米台が地域の民主化を助けるために協力を強化する道を探るということのようである。AITの発表によれば「台湾は民主的統治に関して多くのことを達成してきている。米国は、台湾がその経験を地域の民主化の進展を目指す他の国と共有することにおいて、台湾との協力を強化したい」、「良い統治の手本となることは、自由で開かれたインド太平洋の推進において、台湾が米国の価値あるパートナーとなる多くの道の中の一つである」とのことである。この対話は毎年開催される予定で、第1回の対話は今年の9月に台北で開かれ、国務省の民主主義、人権、労働に関する部局から高官が参加する予定であるという。

 対話がどのように進んでいくのか、効果のほどはどうなのか、詳細はまだ分からないが、呉外交部長の3月11日の演説も強調する、インド太平洋において民主主義を促進するという台湾の役割に資する試みであるように思われる。もちろん、中国側の攻勢は、今後強まることはあっても弱まることは考え難い。最も大きなファクターは米国による台湾関係法に基づく台湾援助であるが、米国、台湾、それに日本を含む地域のパートナー国は、小さな取り組みであっても着実に積み重ねていく必要があり、実際、そういう流れになっているように思われる。
 

  
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