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2019年4月6日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 10連休となるゴールデンウィーク(GW)に日本人が多く旅行するとみられるパリやロンドンで治安が悪化、スリや置き引き、ひったくりなど盗難被害が大幅に増えている。驚くべきはパリの地下鉄で日中にスリが横行し、ロンドンではスクーターを使った荒手のひったくりなどが起きていることで、外務省は安全情報を出して日本人旅行者に警戒するよう呼び掛けている。

(tommaso79/gettyimages)

地下鉄内でスリ横行

 パリの現地からの最新情報によると、公共交通機関における盗難の発生件数は年明けから前年比で33%を超える大幅増を記録しているという。現地紙ルパリジャンの4月1日付けによると、この要因として2018年11月から燃料税の引き上げに反対して始まったフランス政府に抗議する「黄色いベスト運動」への対応のために警察が他の職務に手が回らなくなったため、スリが増加する一因になったと説明している。

 公共交通機関における盗難の9割が、暴力が伴わないスリで、逮捕者の56%が未成年者。国籍では9割が東欧諸国又は北アフリカ諸国の出身者が占める。未成年者の場合、逮捕しても責任を追及する手段が限られており、すぐに釈放されてまた犯罪を繰り返すという状況が続いている。これを見越して、東欧諸国から未成年者を送り込んで荒稼ぎをさせる犯罪団も多い。これらの未成年者らはグループで行動し、車中の観光客に狙いを定めて、多数で囲むように接近して金品を奪って逃走する。

 スリが特に多いのが地下鉄6号線ビラケイム駅(エッフェル塔の最寄り駅)で、運転士が「今、車中にスリがいます」と警告のアナウンスをすることもあるそうだ。RATP(パリ交通公団)では、被害額が1000ユーロ(約12万5000円)を超えないスリの被害者(暴力行為が伴わない窃盗)が警察に被害届を出せるよう支援する窓口をこの1月から49駅に開くと共に、乗客に警戒を促している。

政権不安で治安悪化

 フランスではマクロン政権に対する抗議するデモが3月30日に20週連続で行われた。デモに伴う破壊行為や暴力を阻止するため、フランス内務省当局は前週に続き、パリのシャンゼリゼ通りを封鎖してデモを禁止するなど取締りを強化している。エッフェル塔周辺でも過去にデモ隊と警察が衝突しており、観光客は近づかない方がよい。

 それでも30日の全国でのデモ参加者は3万3700人だったそうで、いまのところ鎮静化する兆しは見えていない。こうした反政府デモは南部のアビニヨンなどでも起きており、フランスへの旅行は要注意だ。

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