中東を読み解く

2019年4月11日

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 9日のイスラエル総選挙はネタニヤフ首相率いる右派「リクード」と中道連合「青と白」が大接戦を繰り広げたが、連立協議の枠組みは右派勢力が優位に立ち、首相の続投が濃厚となった。首相はパレスチナ自治区の入植地併合など強硬方針を表明。イスラエルとパレスチナの「2国家共存」は絶望的となり、パレスチナ人が“二級市民”となるアパルトヘイト化が現実味を帯びてきた。

(REUTERS/AFLO)

首相在任、史上最長に

 選挙は即日開票され、10日未明の段階で、「リクード」とガンツ元軍参謀長率いる「青と白」がともに35議席を獲得。単独で過半数(61議席)を獲得する政党がないため、水面下で連立協議が加速。首相が極右や宗教政党を取り込み、最終的に65議席程度を確保し、連立政権を発足させる運びだ。大統領が2、3日中に正式に首相に組閣を要請する。

 ネタニヤフ氏の在任期間はこれまで通算4期、13年に渡っており、続投が確定すれば、今夏に建国の父ベングリオンを超えて史上最長となる。文字通り、歴史に名を残す指導者となるだろう。首相は大勢判明後、「国民はまたも私を信頼してくれた」と勝利宣言をした。

 首相が連立交渉をうまく運んだのは、右派に向けて大盤振る舞いをしたからだ。首相は選挙直前の6日、新政権を発足させたあかつきには、ヨルダン川西岸のパレスチナ自治区の入植地をイスラエルに併合するという方針を発表した。パレスチナ側は強く反発し、西岸全域の併合につながると懸念を表明した。

 1993年の「オスロ合意」で確定したパレスチナ自治区の西岸には、パレスチナ人約260万人が居住。ガザ地区と合わせれば450万人のパレスチナ人が自治区で暮らしている。イスラエルはこの間、国際社会の批判を無視して西岸への入植活動を推進、現在は40万人のユダヤ人が住むまでになっている。

 しかし、この入植地拡大は中東和平交渉にとっては大きな障害だ。国際的に認知されている和平の方式はイスラエルとパレスチナによる「2国家共存」だ。だが、ユダヤ人入植地は将来のパレスチナ国家の建設地である西岸一帯に拡大しており、いざ国家を樹立しようとしても、ユダヤ入植者を他の場所に移す必要に迫られるなど極めて困難な状況になってしまう。

 しかも、ネタニヤフ首相の入植地の併合方針は、入植地をなし崩し的にイスラエルの領土にしてしまうということに他ならず、事実上「2国家共存」の否定である。このままでは、最終的にすべての自治区をイスラエルに併合し、1つの国家「大イスラエル」の中で両民族が共存していくという形に近づく。

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