スリランカの連続爆破テロは、犯行に関与したとされる地元のイスラム過激派「ナショナル・タウヒード・ジャマア」(NTJ)のメンバーら40人が拘束され、同国政府は国際的な過激派が支援したと断じている。しかし、犯行声明が出されないなど背後関係の謎は深まるばかり。過激派組織「イスラム国」(IS)の影も見え隠れする。事件の闇に迫った。
無視された数々の危険情報
事件を検証すると、数々の情報があったにもかかわらず、治安当局が犯行を未然に防げなかったことに驚きを禁じ得ない。4月11日に警察上層部から治安関係者に出された「テロ警戒通達」は教会などにテロが切迫していると警告。警戒対象者として、昨年12月に発生した仏像破壊事件の容疑者、NTJ指導者のモハメド・ザハランが浮上していることを明らかにし、ザハランは数日間当局の監視下に置かれた。
ザハランはここ数年、「不信人者を殺害せよ」などとネット上に過激な書き込みを続けていた人物だ。米ニューヨーク・タイムズによると、スリランカ当局は1月、この仏像破壊事件の捜査の過程で、北西部の農園に隠されていた武器庫を発見。武器庫には約100キロにも上る爆薬やライフル、弾薬などの兵器類が隠匿されていた。
武器庫を所有していたのはNTJに関係すると見られる母国育ちの「イスラム過激派集団」だった。だが、その詳しい実態は明らかにされていないし、この集団が今回のテロにどう関わっていたのかも不明。NTJは2015年ごろ、同国の多数派仏教徒の過激派の攻撃に対抗するため、イスラム教徒の地盤である同国東部で設立された。
テロ警戒通達が出される前の4月4日、南アジアの過激派の動向に目を光らせているインド治安当局がスリランカの情報機関に貴重な情報を提供した。情報はキリスト教の教会やインドの関係施設を狙った大掛かりなテロが計画されているというものだった。その中には、ザハランの携帯番号や潜伏先も記されていたという。
この他、NTJの5人の氏名や潜伏先のほか、メンバーの徴募に熱心なザハランの兄弟が23時から明け方の4時の間に、妻や子どもの住宅に忍び込むことまで明記されてあった。治安当局はこうした情報も加味して、NTJの組織の実態を相当詳しくつかんでいたのは間違いない。だからこそ、事件発生からわずか数時間以内に多数の容疑者を拘束できたと見られている。現在、ザハランの生死は不明。