チャイナ・ウォッチャーの視点

2011年12月14日

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有本 香 (ありもと・かおり)

ジャーナリスト

企画会社経営。東京外国語大学卒業後、雑誌編集長を経て独立。近年とくに中国の民族問題の取材に注力している。『中国はチベットからパンダを盗んだ』(講談社)『なぜ、中国は「毒食」を作り続けるのか』(祥伝社)の他、近著に『中国の「日本買収」計画』(WAC BUNKO)がある。

 先月末の拙稿(11月30日「衝撃 チベットで相次ぐ僧侶の焼身自殺」)からわずか3日後に、またもやチベットから悲しいニュースが届いた。12月に入り、チベット自治区の東にある、チャムド(昌都)で、46歳の元僧侶(現在は俗人)のチベット人が焼身したと伝えられたのである。とうとう今年3月以降、チベットでの焼身は少なくとも12件にいたった。そして、この元僧侶の件と相前後してインターネット上に流れた、別の、目を疑うような、しかし生々しい画像が、世界のチベットサポーターにあらためて大きな衝撃をもたらしている。

首から下げる看板に罪状書かれた僧侶たち

 「分裂国家」などの“罪状”が書かれた看板を首から下げた僧侶らが、地面に跪かされている――。まるで、文化大革命(1966~1976年)の頃さながらの弾圧の光景。別の画像では、同じ僧侶らがまるで家畜のように、トラックの荷台へ詰め込まれ、看板のかかった首だけを荷台の外へ出した姿勢で晒しものにされている。画像の中には、年端のいかない少年の面差しの人が何人も見えた。

 信じがたい、としか評しようのないこれらの画像は今秋、四川省の成都ならびに徳陽の特別警察が行った“治安維持のための活動”を撮ったものとされている。筆者が、インド、ダラム・サラのチベット亡命政府、米国ワシントンのボイス・オブ・アメリカのチベットセクション等の関係者に画像の真偽を照会すると、それぞれが、これを「本物」と判断するに足る根拠をいくつか挙げた。残念ながら、これらは、実際に今チベットで起きていることを撮ったものと見て間違いなさそうである。

 徳陽は、四川盆地の西北に位置し、その西南には、前回の原稿で触れたンガバ(アバ・チベット族・チャン族自治州)が隣接する。アバは、チベット語の音に近づけるため「ンガバ」と表記されることがあるのだが、ここは件の、僧侶の焼身の発端となったキルティ僧院のある地域である。今年3月の事件以来、キルティ僧院の周辺には約2万人の警察部隊が外から送り込まれたとの情報があり、僧侶逮捕の報も相次いでいた。

 チベット人の焼身抗議が続くなか、当局の締め付けは厳しさを増すばかりだという。これらの画像はその弾圧の凄まじさとともに、あらためて、中国共産党によるチベット支配がどういうものであるか、をまざまざと示したものだといえる。同時に、最近の一連の事柄は、半世紀以上もの間、解決の緒にもつかない「チベット問題」に関する、重要ないくつもの論点をあらためて投げかけた、ともいえるのである。

焼身自殺が起きた現・四川省は、チベットの領土

 その論点を整理してみたい。まず、注目すべきは12件の焼身が起きた地域である。僧侶による焼身が、突出して多く発生したのは前出のンガバ(四川省)で、9件起きた。次いで、2件発生したのが、やはり前稿で書いた、尼僧の焼身自殺があったタウ(四川省)、さらにカムゼ(四川省)、チャムド(チベット自治区)でそれぞれ1件ずつ発生している。

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