チャイナ・ウォッチャーの視点

2012年1月4日

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城山英巳 (しろやま・ひでみ)

時事通信社外信部記者

1969年生まれ、慶應義塾大学文学部卒業後、時事通信社入社。社会部、外信部を経て2002年6月から07年10月まで中国総局(北京)特派員。 外信部を経て11年8月から2度目の北京特派員。11年、早稲田大学大学院修士課程修了。現地での中国取材は10年に及ぶ。16年5月に帰国し、現在外信部記者。近著に『中国 消し去られた記録〜北京特派員が見た大国の闇』(白水社)、著書に『中国臓器市場』(新潮社)、 『中国共産党「天皇工作」秘録』(文春新書、「第22回アジア・太平洋賞」特別賞受賞)、『中国人一億人電脳調査』(文春新書)がある。14年に戦後日中外交史スクープで13年度「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞。

 中国の人気週刊誌『南方人物週刊』は昨年末、2011年の中国を表す漢字として「翻」を選んだ。「ひっくり返る」という意味だが、40人が死亡した浙江省での高速鉄道転落事故、ひき逃げされた2歳の女児が18人の通行人に無視され再び跳ねられた事件、定員の7倍以上もの園児をすし詰めにしたスクールバスの衝突事故など、「翻」を想起させる事件が相次いだ。さらにこれら事件で政府批判などの道具として存在感を発揮したミニブログ「微博」についても同誌は「秩序をひっくり返すメディア」と評価した。「翻」はまさに11年の混沌とした中国社会を象徴した一文字だ。

2012年は“穏”の字が第一

 年が明けて2012年。共産党・政府は新たな一年にある漢字に期待を込めている。「2012年は“穏”の字が第一」と報道したのは、中国誌『中国新聞週刊』。秋に5年に一度の共産党大会を控え、共産党指導部が掲げる来年の経済政策の基調も「穏中求進」(安定の中に前進を求める)だ。

 しかし、今や「8億のアカウントが登録され、毎日2億件が情報発信される」(国営新華社通信)という微博では百家争鳴の議論が展開され、社会を揺さぶっている。果たして中国にとって12年はどんな年になるか。

秋の共産党大会へ何より「安定」

 社会安定を統括する共産党中央政法委員会。同委書記の周永康・政治局常務委員が出席して12月22日に北京で開かれた座談会の現状認識は極めて厳しかった。

 「終始、政治的な冷静さと揺るぎなさを保持しろ。現在、国際情勢は錯綜して複雑さを増している。国内の改革・発展・安定の任務も極めて困難かつ重い問題だ。党の18回大会の開催を勝利で迎えるため、調和の取れた安定した社会環境をつくり出すことは、全国政法機関にとって第一の政治的任務だ」

 「力」で社会の安定を半ば無理やりに実現させる「維穏」(安定維持)が、政法委の任務であることはこうした認識から分かるだろう。この手荒な手法に異を唱える改革派知識人に「これまでと違う」と絶賛されたのが、広東省のある村で起こった反乱に対する同省トップ・汪洋党委書記の決断だった。

幹部の横暴と腐敗に立ちあがった農民

 事件の経緯を説明しておこう。

 広東省陸豊市烏坎(ウーカン)村。約40年もトップに君臨した共産党支部書記が、農民の土地使用権を勝手に開発業者に売却したり、村幹部を選ぶ選挙を無視して人事権を乱用したりするなど、腐敗と横暴の限りを尽くした。村民は市政府などに陳情を繰り返したが、何も聞いてもらえず、昨年9月、ついに怒りが爆発し、大暴動に発展したのだ。

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