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2019年6月25日

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中西 享 (なかにし・とおる)

経済ジャーナリスト

1948年岡山県生まれ。72年共同通信社に入社。88年から91年までニューヨーク特派員、経済分野を取材し、編集委員を経て2010年に退社。現在は経済ジャーナリスト。著書は「ジャパンマネーの奔流―ニューヨーク・東京・ロンドンの24時間」(1987年、ダイヤモンド社)、「日本買い 外資は何を狙っているか」(2005年、PHP研究所)など。

 イランのラフマーニ駐日大使は24日、安倍晋三首相のイラン訪問、緊迫する米国との関係などについて、日本記者クラブで講演し「中東地域の安定をもたらすためには、外国勢力、特に米国軍がこの地域から撤退すべきだ。本当に誠意があるのであれば米国はイランに対する制裁を解除すべきだが、トランプ米大統領の発言は誠意が感じられない」と強い口調で指摘、米国との交渉に応じられる状況ではないことを強調した。

モルテザ・ラフマーニ・モヴァッヘド 1959年生まれ。外務省に入り、1990年駐ドイツ大使館一等書記官、99年駐上海総領事、2010年外務省国際教育研究センター副センター長、18年7月から駐日イラン大使(日本記者クラブ提供)

危うい緊張関係

 トランプ政権は同日、追加経済制裁として最高指導者ハメネイ師や同師直属の革命防衛隊の幹部を新たな制裁対象に指定した。最高指導者に対する責任を問うことになり、イラン側の猛反発は必至と見られ、両国の緊張関係はさらに高まることが予想されている。米国とイランとの関係は、6月20日に米国の無人偵察機がホルムズ海峡上空で、イランの革命防衛隊のよって撃墜されたことから、一気に緊張が高まった。これに対してトランプ大統領は21日の早朝にこの報復として、一時イランへの攻撃を命じたが、10分前に中止するという危うい場面があったばかりだ。

 これに先立ちトランプ政権は5月5日に、イランの挑発的行為に対応するためとして中東地域に原子力空母「エーブラハム・リンカーン」と爆撃機部隊を派遣すると発表、さらに同月25日には1500人の追加派兵を決めた。この派兵はミサイル防衛、監視とペルシャ湾の航路の確保が目的としているが、イランはこうした米国の軍事力増強に対して、「国益が侵された場合は断固とした措置を取る」と強く反発、軍事衝突の危険性が高まっているとみられている。

核合意への復帰を

 ラフマーニ大使は、今回の安倍首相の6月12日から13日のイラン訪問の際に、ハメネイ師、ロウハニ大統領との首脳会談に同席した。こうした緊張状態の下で行われた講演で大使は、米軍が中東地域に駐留することとで「この地域の不安定化をもたらしている。国際社会は米国に対して、敵対的、好戦的な政策をやめさせるようにすべきだ」と主張した。

 イラン核合意との関係については「核合意は13年間の交渉で結実したもので価値のある合意だ。米国の核合意からの離脱によりイランは経済制裁を受けてきたが、過去1年間、最大限の自制措置をしてきた。しかし、イランにとって何も良いことはないので、米国への具体的な対抗措置を決め、核合意の26条と36条に基づいてイランの条約義務履行をいまのところ停止している」と述べた。

 トランプ大統領が前提条件なしでイランと交渉の用意があると交渉に前向きな発言をしていることについては「これはまやかしだ。本当に(交渉に向けて)誠意があるのなら、核合意に戻ってイランへの制裁を解除すべきだで、核合意の原点に戻ることが肝心だ」と指摘、米国に対して核合意への復帰を強く求めた。また「経済制裁という圧力にさらされた状況では実のある交渉はできない」と主張、米国との対話は拒否する姿勢を明確にした。

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