沖縄防衛局の真部朗局長が沖縄県宜野湾市の市長選挙(12日投開票)で市内在住の防衛局職員らに選挙で投票するよう「講話」した問題で、防衛省が近く局長を処分する見通しだ。省内の調査で真部氏が「特定の候補を支持するような内容の講話はしていない」と説明していることから、「訓戒や注意などの処分にとどめるべきだ」との意見もあるようだが、真部氏の責任を問う声は高まっている。
報道によれば更迭される見通しだという。真部氏が特定の候補を支持する講話はしていないとしても、聞いた側の職員の受け止め方は違うかも知れない。中立であるべき公務員が選挙において特定の候補に肩入れをすることは厳に慎むべきであるから、誤解を招くような振る舞いをした真部氏にも一定の責任はあるだろう。
しかし、翻ってみて、選挙にあたって公務員が特定の候補に肩入れをするような動きがこれまでになかったであろうか。問題となっている宜野湾市長選をめぐる文書を記者は入手した。文書は今年1月25日付。宜野湾市職員労働組合の執行委員長の名前で、組合員である市の職員に対し、市長選の2人の立候補予定者のうちの一方を応援する選挙活動をするよう呼びかけたものだ。
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この市長選では、沖縄県議会議員の佐喜真淳氏(47歳)=自民・公明推薦と元宜野湾市長の伊波洋一氏(60歳)=社民・共産・社大推薦の2人がすでに立候補を表明している。
文書は「政治闘争(宜野湾市長選挙)の取り組みについて」と題して、「イハ洋一さんの勝利を目指し、支持者獲得1人20人以上を取り組みます」、「イハ洋一さんの勝利を目指し、組合員1人あたり週2行動に取り組みます」などの行動目標を挙げ、組合としてこれらの行動に取り組むので、「組合員のみなさんのご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます」としている。
さらに、チラシや支持者カードを配布するときに受けるであろう質問に対する想定問答まで用意されている。ここでは、伊波氏がかつて宜野湾市長を辞任して10年11月の沖縄県知事選に出たにもかかわらず、再び宜野湾市長選に立候補するのはなぜか、と聞かれた場合には、「これまで行ってきた市民サービスの継続と拡大・充実、また『普天間基地の早期閉鎖・返還』と『県内移設反対』という、宜野湾市民の『ゆるがない意思』を今後も貫くためです」と答えるように指示している。
実際にこの呼びかけを受けて、市の職員らは伊波氏への投票を呼びかける運動を開始しており、宜野湾市の市民は記者の取材に、平日の日中に呼びかけをされたと証言する。だとすると、勤務時間中に選挙活動をしていた疑いすら出てくる。
これまでにも公務員の労働組合による選挙活動への関わりをめぐってはたびたび問題にされてきた。2010年には北海道教職員組合が前年に行われた衆議院選挙で民主党の候補の陣営に多額の組合費を「選挙対策費用」として渡していたことが発覚し、委員長代理や書記長ら4人が逮捕される事件があった。この選挙の際には、組合員が勤務時間中に活動を行っていたことも明らかとなり、北海道教育委員会が調査に乗り出す事態となった。
昨年11月の大阪市長選でも市の職員組合の一部は橋下市長の当選を阻止するために、平松邦夫前市長を支援。橋下市長の当選後に、市労働組合連合会の中村義男執行委員長が傘下の大阪交通労組が市庁舎内で政治活動をしていたことを認め「当然あってはならないこと。組合として責任を感じている」と謝罪している。
このほかにも公務員の労働組合が選挙において特定候補の支援活動をすることは選挙のたびにみられてきた。宜野湾市の職員組合でも常態化していたという。はたして責任を問われるべきは沖縄防衛局長だけなのだろうか。
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