前向きに読み解く経済の裏側

2019年8月26日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

 人手不足倒産は日本経済にとって「好ましい」、と久留米大学商学部教授の塚崎公義は説きます。

(Smokhov/gettyimages)

人手不足倒産が増えている

人手不足倒産が増えています 。内訳を見ても、「後継者難」が減り、「求人難」など文字通りの人手不足倒産が増えているわけです。

 倒産は、当該企業の社長にとっては最悪の事態であり、大変な御苦労と悲しみを抱えておられるでしょうから、同情申し上げます。

 しかし、そもそも事業を営むということはハイリスク・ハイリターンに挑むということですから、優勝劣敗で淘汰される場合もありましょうし、不運に見舞われる場合もあるでしょうが、勝者と敗者が出てくることは仕方のないことでしょう。

 もちろん、不用意に「好ましい」などと記すのは気が引けますが、日本経済を全体として捉える視点から、敢えてそうすることとします。

 まず、人手不足倒産が深刻化するほど景気が良いということを素直に喜びましょう。景気回復によって需要不足型倒産が少なくなっているので、倒産件数全体としては低水準です。

 需要不足倒産や、大型倒産に伴う連鎖倒産や、金融危機による「貸し渋り」が招いた倒産などが多発する経済と比べると、人手不足倒産が増える経済は遥かにマシでしょう。

そもそも、人手不足は良いこと

 そもそも、人手「不足」という言葉が問題です。良くないことが起きているようなイメージの言葉ですから。企業経営者にとっては困ったことかもしれませんが、労働者にとってはライバルが少ないということですから、嬉しいことなはずです。

 失業の恐怖が少ないだけでなく、需要と供給の関係で労働力の価格である賃金も上昇していくことが見込まれます。ブラック企業も社員を引き止めるためにホワイト化せざるを得ません。

 そこで筆者は「人手不足」「労働力不足」といった言葉の代わりに「仕事潤沢」といった明るい言葉を使いたいと考えています。もう少しセンスの良い言葉が見つかれば良いのですが。

人手不足なら、日本経済が効率化する

 人手不足になると、各社が省力化投資を始めます。たとえば飲食店は、今までアルバイトに皿洗いをさせていたのを、自動食器洗い機に洗わせるようになるでしょう。それにより、日本の飲食業が効率化し、労働生産性が上がるわけです。

 高い給料の払えない生産性の低い企業から、高い給料の払える生産性の高い企業へ、労働者が移動するということも、日本経済を効率化させるでしょう。非効率な企業が倒産することによって労働者が移動するとすれば、今回のタイトルどおり日本経済にとって「好ましい」という事になるわけです。

 それ以前に、人手不足であれば失業対策の公共投資が不要です。失業対策の公共投資は、労働生産性が低いものが多いので、それが不要になること自体が日本経済全体としての効率化になるわけですね。

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