中島厚志が読み解く「激動の経済」

2012年3月23日

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中島厚志 (なかじま・あつし)

経済産業研究所理事長

1952年生まれ。東京都出身。東大法学部卒業後、75年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。パリ興銀社長、日本興業銀行調査部長、みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミストなどを経て現職。著書に『統計で読み解く日本経済 最強の成長戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『日本の突破口―経済停滞の原因は国民意識にあり』『世界経済連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む』(東洋経済新報社)など。

 3月に開催された中国の第11期全人代(全国人民代表大会)第5回会議で、温家宝首相は今年の政府の実質GDP成長率目標を7.5%とし、いままでの8%成長目標を8年ぶりに下方修正した。

 従来から中国の経済成長率は政府目標を上回っており、今年の経済成長率も7.5%の目標以上を達成する可能性は強い。しかし、世界第二の経済大国になったとはいえ一人当たりの所得がまだ低い中国で、国の指針となる政府目標が引き下げられる意味は重い。

世界経済減速は目標引き下げの主因ではない

 今回の目標引き下げについては、世界経済の減速が原因とする見方がある。確かに深刻な欧州での政府債務問題などで、IMFは2012年の世界経済成長率を、1980年~2010年の年平均成長率3.5%を下回る3.3%と見てもいる。

 実際、中国の輸出の伸びは先進国向けがとりわけ欧州中心に鈍化している。欧州は米国を抜いて中国第一の輸出先となっていることから、その鈍化が中国の経済や輸出産業にもたらす影響は無視できない。

 また、原油価格が高水準となっていることから、中国が過度の高成長を追求すればインフレが高まりかねないこともある。なお多くいる低所得層の所得を今後とも向上させていかなければならない中国にとって、成長抑制をもたらす金融引締政策を採らざるを得ないスタグフレーション的な経済状況に陥ることは避けなければならない。

 しかし、リーマン・ショック後の世界経済の落ち込みの中でも、中国政府の成長率目標は引き下げられてこなかった。このことは、政府の成長率目標が中国を取り巻く国際的な経済環境だけで決められているのではないことを示しており、足元の世界経済減速だけを引き下げの原因とみることはできない。

官民投資と輸出に限界が近づきつつある

図1 GDPに占める官民投資の割合
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 では、何が目標引き下げの主因になるのか。ひとつは、中国の経済成長のバランスが取れなくなってきたことだ。

 中国の経済成長は公共事業と企業の設備投資に大きく依存しており、その割合はGDPの約半分に達する。日本の高度成長期のピークが35%を超えた程度であり、90年代の韓国も同程度だったことと比べると、この割合は突出している(図1)。

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