2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2012年4月18日

 Foreign Policy 3月26日付で、米AEIのDan BlumenthalとLara Crouchが、薄熙来解任事件は、中国のトップ数人にしかその真相がわからない権力闘争だが、中国国内で変化が起きていることは確かで、今の体制の恩恵を受けている党や国営企業と、資本主義的改革を必要としている民間企業との間に対立があり、場合によっては軍が権力を握る可能性もある、と言っています。

 すなわち、薄熙来解任事件は権力闘争であるが、中国内部には、国営企業やそこから利益を得ている共産党中央と、民間企業を代表する改革論者との間で相剋がある。これは、中国経済の将来についてコンセンサスがないことをよく示している。こうしたコンセンサスの欠如は、中国の経済モデルの有効性が疑わしくなるにつれて、破滅的な人口政策、政府最上層部に広がる腐敗、動きの鈍い政治指導力等、他の国内問題がしっぺ返しとなって跳ね返ってくることを示唆している。

 つまり、中国は大きな変化を遂げなくてはならないのだが、現実には、今の政治指導部には改革を断行する力がない。そうした場合、中国全体をまとめていける存在は人民解放軍しかない。そのため、中国は今後、改革を達成するか、それとも軍主導の下で停滞が続くか、そのどちらかになるだろう、と言っています。

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 薄熙来事件に関連しての論説ですが、真相は中南海にいるごく少数の者にしかわからないとして、事件自体についてはそれ以上論ぜず、この事件が示唆する中国国内で起きつつある変化に焦点を当てています。

 そして、中国国内では、共産党幹部が権力を謳歌しつつ国営企業で私腹を肥やし、それを軍が支えているが、本来は、民間による資本主義的な改革が必要になってきている、ところが改革が行なわれる見通しは全く立っていない、改革が無ければ、軍の支配による現在の体制、現在の停滞が続く可能性もある、と言っているわけです。

 中国の資本主義的、自由主義的体制改革というところに焦点を当てて考えれば、このように、現状が停滞したまま続くという分析になるでしょう。問題は、そういう状態が、この論説の言うような「停滞」であるかどうかわからないことです。政治的には停滞かもしれませんが、中国経済はまだしばらくは成長余力が残っていると考えられ、現在の「停滞した」政治状況のままで、国力、特に軍事力が更に増大して、国際緊張を増大させる可能性があることが憂慮されます。


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