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2012年4月19日

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佐々木正明 (ささき・まさあき)

産経新聞リオデジャネイロ支局長

1971年岩手県生まれ。大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)卒業。産経新聞社に入社、神戸総局、横浜総局、大阪本社社会部等を経て2014年10月までモスクワ支局長。著書に『シー・シェパードの正体』(扶桑社新書)、『恐怖の環境テロリスト』(新潮新書)

 2011年12月、南極海で反捕鯨団体、シー・シェパード(SS)が日本の調査捕鯨船団に苛烈な妨害を行っている最中、SSが本拠を置く米国で、とある番組の制作発表が行われた。

胸のバッジに弾丸が?
問題の「ドキュメンタリー」再び制作

 ワシントン北郊の衛星都市、シルバー・スプリング。ここに、全世界190以上の国・地域で放映されている世界最大の有料放送局ディスカバリー・チャンネルが本社を構える。同局傘下のチャンネル「アニマル・プラネット」のマージョリー・カプラン社長とジェイソン・ケアリー副社長のトップ2人が自らテレビカメラの前に姿を現し、同チャンネルの人気シリーズ作品が再び放送されることを告げた。

 WHALE WARS(鯨戦争)――。「シー・シェパードの宣伝番組」と言われる。南極海で日本船団を追跡するSS抗議船に制作会社の撮影班が乗り込み、代表のポール・ワトソン容疑者(国際指名手配中)やSSクルーたちの妨害の様子を撮影、編集したドキュメンタリー番組で、筋書きのないドラマ、いわゆる「リアリティー番組」の体裁を持つ。

「WHALE WARS」の公式サイトで  ファンのために配布していた壁紙用写真。手前左がワトソン

 「鯨戦争」は2008年に第1回目を放送して以来、高視聴率を記録。同チャンネルが誇る看板番組となった。しかしながら、この番組は、SSを「海の英雄」と捉えて、合法的な調査を行っている日本船団を一方的に悪玉に仕立て上げるストーリーで、ワトソンが日本人のヒットマンに狙われ、胸のバッジに弾丸がたまたま当たって助かったなどとする“嘘”の場面をそのまま報じるなど、数々の問題シーンを抱える。アニマルプラネットには「暴力や海のテロを助長させている」などと日本だけでなく、米国からも批判が寄せられていた。

 この番組は双方にとってメリットがあった。SSはこの番組のおかげで、世界的に知名度をあげ寄付金収入が増大。一方で、アニマルプラネットはSSに肩入れすることで、視聴世帯の増加やDVD販売などで大きな収益を得ており、そうしたバッシングを退け、08年以来、番組をシリーズ化していた。

環境テロリスト 日本に続々上陸中

 この日、Facebook上でアップされた鯨戦争の宣伝動画で、カプラン社長は11年~12年の妨害キャンペーンにも撮影班が加わり、12年中にシーズン5を放映することを明らかにした。さらにカプラン社長はこんな言葉を付け足し、SSを持ち上げた。

 「私たちは誰もが皆、昨年、シー・シェパードが捕鯨を停止させたと思っていた。しかし、彼らは再び、自らの信念のために命をかけようとしている」

 SSは米連邦捜査局(FBI)によって、「環境(エコ)テロリズムの起源」とも定義される過激団体で、各国で数々の事件を起こし、ワトソンを含めた数人のメンバーが今も、国際指名手配されている。終始、微笑みを絶やさなかった社長の言葉には、日本の食文化や調査捕鯨の正当性に対する配慮はまったく含まれていなかった。

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