環境テロリスト 日本に続々上陸中(前篇)

活動家にとって天国の日本


佐々木正明 (ささき・まさあき)  産経新聞リオデジャネイロ支局長

1971年岩手県生まれ。大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)卒業。産経新聞社に入社、神戸総局、横浜総局、大阪本社社会部等を経て2014年10月までモスクワ支局長。著書に『シー・シェパードの正体』(扶桑社新書)、『恐怖の環境テロリスト』(新潮新書)

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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和歌山県太地町の暴行事件で無罪となったオランダ人男性、アーウィン・フェルミューレンさん。(2月24日 都内の日本外国特派員協会で行われた記者会見 筆者撮影)

 2月24日、都内の日本外国特派員協会で行われた記者会見。ソバージュ風の長髪男性が厳しい表情をして、集まった各国メディアの東京特派員に訴えた。

 「ロシアの作家、ドストエフスキーはもしその国の文明度を見たかったら、刑務所に行ってみろと言った。私は60日間、寒くて、不十分な食事しか与えられない和歌山県の拘置所で閉じ込められた。全ての環境が残酷だった。もしこれを変えなければ、日本は真の民主主義国家とは言えない」

 2011年12月、和歌山県太地町で警備の男性をついたとして暴行容疑で立件されたオランダ人男性が、3カ月間に及んだ刑事裁判で無罪を勝ち取り、この日、心情を吐露した。男性の隣には、地元の伝統イルカ漁に妨害を加えるため太地町に常駐している米国の反捕鯨団体、シー・シェパード(SS)幹部のスコット・ウエストがいた。

イルカのためには死さえ考える

 オランダ人男性は拘置中に10キロ体重が減ったこと、シー・シェパードは誰かを傷つけるような暴力団体ではないことを伝え、「私は無罪だ。だが今まで、関係者の誰からも謝罪を受けていない」と訴えた。

 この事件で、オランダ人男性が無罪を勝ち取ったことはSSや各国で反捕鯨運動を行っている諸団体にとって、日本に対する大きな攻撃材料となった。そして、日本ではこの会見はほとんど報じられなかったが、オランダや米国を含めた反捕鯨国では広く伝えられた。

 スコットはなぜ、SSがイルカ漁妨害を展開しているのかをとうとうと説明した。

和歌山県太地町で、追い込みイルカ漁が行われる入り江 (2011年9月28日 筆者撮影)

 「イルカを殺害することは近代的な文明世界では犯罪と考えられている。しかしながら、日本の現行法ではイルカやクジラの殺害は許されている。このことは日本の名声を貶めている」

 3月初旬に太地町でイルカ漁の漁期が終わっても、世界中から活動家が集まり、「イルカ漁妨害」ならぬ「太地町妨害」を続けている。南アフリカから来た女性活動家は私にこんなことを言った。

 「私は、動物の生きる権利を守りたいの。自分がどうなってもいい。信念のために死ぬ用意はできているわ」

 イルカのためには死さえ考える。太地は日本人が知らぬ間に、そんな過激な思想を持つ活動家が集まる場所になっていたのだった。

日本に本格上陸? 恐怖の環境テロリストたち

 SSや団体代表のポール・ワトソン容疑者(国際指名手配中)の言動が世間を騒がせて久しいが、SSよりもさらに苛烈な破壊工作や悪質な嫌がらせを行う環境テロリストが今、日本に本格上陸しようとする兆候がある。日本より先行して1980年代から「エコテロリズム」の被害に悩まされた米国と英国では、“反エコテロ法”を制定して取り締まりを強化した経緯があるが、彼らは両国の厳しい法の網を逃れ、近隣国や関係国で資金集めと人員リクルートのための活動を活発化させている。

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著者

佐々木正明(ささき・まさあき)

産経新聞リオデジャネイロ支局長

1971年岩手県生まれ。大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)卒業。産経新聞社に入社、神戸総局、横浜総局、大阪本社社会部等を経て2014年10月までモスクワ支局長。著書に『シー・シェパードの正体』(扶桑社新書)、『恐怖の環境テロリスト』(新潮新書)

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