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2012年3月28日

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佐々木正明 (ささき・まさあき)

産経新聞リオデジャネイロ支局長

1971年岩手県生まれ。大阪外国語大学(現・大阪大学外国語学部)卒業。産経新聞社に入社、神戸総局、横浜総局、大阪本社社会部等を経て2014年10月までモスクワ支局長。著書に『シー・シェパードの正体』(扶桑社新書)、『恐怖の環境テロリスト』(新潮新書)

*前篇を読む方はこちらから

 1月、オーストラリア沖で日本船に乗り込んできた男の右腕に彫られていた「モンキーレンチ」の入れ墨は、過激環境保護運動のシンボルだった。これは、1975年に米国人作家エドワード・アビーが記したベストセラー小説「The Monkey Wrench Gang」に由来する。

 この小説には、米南西部に残された広大な自然環境を業者の開発から守るために、工事現場の建設機械をぶちこわし、巨大ダムの破壊をももくろむ4人組の戦いが描かれている。

 私が3月に刊行した『恐怖の環境テロリスト』(新潮新書)では、モンキーレンチがいかにアメリカの環境保護系、動物愛護系の過激活動家に影響を与えていったかを記している。シー・シェパード(SS)代表のポール・ワトソン容疑者(国際指名手配中)もアビーに敬意を表し、自らが乗る抗議船を一時、「エドワード・アビー」号と名付けていたくらいだ。

活動家の最前線となった太地町

イルカ漁妨害のために和歌山県太地町で監視活動を行うシー・シェパード幹部のスコット・ウエスト (2010年10月4日 筆者撮影)

 「モンキーレンチ」の関係者は、活動家によるイルカ漁妨害が行われている和歌山太地町にも訪れていた。SSは2010年からこの地で、「コーヴ・ガーディアンズ」(入り江の番人)を組織し、「イルカの殺戮」を守るため全世界の人々に活動に参加するよう呼びかけている。これは、支持者や寄付金収入を増やす1つのSSの営業活動でもある。

 当初は、伝統的なイルカ漁を一方的な編集で批判した米アカデミー賞「ザ・コーヴ」(2009年)に触発されて、日本旅行のついでといった物見遊山的な参加者が多かったが、次第に、ワトソン代表の国際的な知名度やSSの勢力を利用して、素性のうかがいしれない世界各国の活動家が集う最前線と化した。

 SSは活動家を太地町に常駐させ、妨害するためのノウハウや漁師たちの情報などを蓄積し、さらに活動方法をブラッシュアップしている。先輩活動家が1人いれば、長期滞在の衣服を詰め込んだカバン1つで日本にやってきて、初日から妨害に参加できる。

 日本のメディアはその実態をほとんど伝えていないが、今ではSSが組織する「コーヴ・ガーディアンズ」だけでなく、他の複数の類似団体が競争して、イルカ漁妨害を行う地となっている。

過激活動家を取り締まる法規制が脆弱な日本

 2010年、ガーディアンズの一員に加わった米シアトル出身のレイという男がいた。「シー・シェパードのコーディネーター」として、現地でも環境保護運動や動物愛護運動に熱を入れている人物で、地球保全のために、牛乳や卵さえも口にしない完全菜食主義者「ビーガン」の生活を貫いている。彼の回りには、薬品を開発するために動物実験を行う研究者や漁師らを襲うことを厭わない危険人物が蠢いていた。

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