調理現場から発案されたコンセプトは「LOVE」
野菜を多く取り入れた定食から、ボリューム充分の主菜、デザートもカバーする副菜までを幅広く用意。定食だけではなく単品でも提供しているため、主菜に合わせて「ひじき煮」や「しらすおろし」などの小鉢をセレクトしたり、ライスとパンの好きな方を選んだりすることもできる。この日であれば、例えば主菜の「ダブルハンバーグ」にパンをセレクトする、定食にグレープフルーツの小鉢をつける、といった具合だ。「手作りのお弁当を持ってきて社員食堂で食べていただくのももちろんウェルカム。お弁当に小鉢のサラダや味噌汁をプラスするという利用方法もあります」(店長・仲丸裕士さん)。
社員食堂のコンセプトは「Love」。「愛情をこめた料理で、社員のモチベーションアップと健康増進を」目指すという意味合いをこめている。このコンセプトの頭文字は、それぞれ「Life style」「Low-calorie」、「Originality」「Organic」、「Variety」「Vegetable」、「Energy」「Excellent」の意味を持つ。
「このコンセプトは実際に調理を行うメンバーから出てきた案。言葉だけが踊ってしまうのではないかという心配もあったが、現場から出てきた意見を尊重したいと思いました」(嘉屋社長)。実際に現場の調理を監督する仲丸さんは、「コンセプトのもと、お客様のニーズに合ったもの、そして健康管理を主体により野菜が摂れるメニューであることを重視しました。たとえば生野菜はなかなか量が摂りづらいけれど、茹でたり揚げたりすることによって野菜を多く摂ることができます」と話す。
おいしくてヘルシー
女子栄養大とのコラボメニュー
さらに、今年の1月から始まった取り組みがある。女子栄養大学のカフェテリア(学生食堂)で提供されているメニューを「女子栄養大学カフェテリアランチ」として日替わりで提供しているのだ。これは社員の健康意識の高まりを受けて始めたもの。実際に女子栄養大学のカフェテリアを視察したという嘉屋社長は、「学生の健康づくりを非常に意識していて、ビタミンを多く含むなど栄養価の高い胚芽米を使ったり、味噌汁は具だくさんだったりと、とても参考になるレシピと感じた。日本の栄養学の権威である女子栄養大学の力を借りて、より満足感と安心感のあるメニューを実現したかった」と話す。社員食堂を運営する会社から女子栄養大学へのアプローチはこれが初めてという。
たとえば、この日のメニューは、主菜の「イカの辛味炒め」にハムと青菜を和えた小鉢、味噌汁、胚芽ご飯がついた定食。608キロカロリー、塩分量3.4グラム、野菜たっぷりで価格は450円だ。基本的に女子栄養大学が考案したレシピを使うが、社会人男女が食べることを考慮に入れて野菜を中心にボリュームを増やしている。それでも、ご飯や味噌汁を合わせて600キロカロリー台に抑えているという。
この定食を選んでいた社員の一人、堀口利江さんが「周りの女性社員は、やはりヘルシーさを気に入って注文する人が多いですが、個人的にはおいしそうだなと思ったときに頼みます」と話す。「ヘルシーだと味が薄いというイメージがあったようです。『思ったよりおいしいんだね』というお客様が多いです」(仲丸さん)。「(社食)利用者の女性比率は25%ですが、女子栄養大メニューの女性比率は約40%。女性に人気のメニューですが、意外に男性も選ぶ。やはり健康を気にされている方が多いというのがわかりますね」(北山さん)。現在、1日に150食程度提供しているという。