創業1876年、世界最大規模の印刷会社である大日本印刷。近年は電子書籍関連事業への取り組みも話題となっている。従業員はグループ全体で約4万人。都内だけでも多くの事業所を抱えるだけに、社員食堂の数も多い。今回は、市ヶ谷にある本社ビル近くの社員食堂を訪ねた。
ゆとりあるスペースを確保した食堂フロア
「人の流れ」が滞らない設計に
ビルの5階に位置し、大きな窓から日差しがいっぱいに入る社員食堂。昼食時には約1,000人が利用するこの食堂では、テーブル席のほか、テラス席やカウンター席も用意されている。「グループで利用したいとき」「ひとりで急いで食事を済ませたいとき」、どちらの場合にも対応できる設計だ。食堂に入ると順にメニュー表、円形のサンプル展示台、大小2つの楕円形状のオープンキッチンからなる提供レーン、給茶器・調味料コーナーへと続き、喫食後、精算カウンターへと流れる。動線となるスペースにはゆとりを持たせており、利用者はほぼ一方通行で進むので、人の流れが滞ることがない。
社食へのこだわりは、入口近くに置かれたサンプル台からすでに見て取れる。主菜・副菜合わせて10種類以上の日替りメニューの実物を展示しているのだ。社員はイントラネットで1週間分のメニューを事前に確認できるが、「メニュー表や作り物サンプルを見てもイメージがつきにくいものもありますよね? ですから提供する実物を見ていただければと思いました」と話すのは、社員食堂やセキュリティシステムの管理・運営を行うDNPファシリティサービスの嘉屋憲一社長。社長自ら入り口に立ち、社員の反応を見ることも多いという。
実際に利用者の多くは、実物が置かれた円形のサンプル展示台をぐるりと眺め、「どれにしようか」と楽しげに選んでいた。メニュー表には価格とともに、カロリーと塩分量も表記されている。
提供レーンも独特だ。「大アイランド」「小アイランド」と呼ばれる楕円形状の2つのオープンキッチンを利用者は行き来する。アイランドの中からスタッフが料理の提供を行い、実際に調理する様子も見ることができる。「調理はバックキッチンでも行いますが、この2つのアイランドの中でも行います。調理している場面を見ることで、お客様に『安心感』を持ってもらいたい」(DNPファシリティサービス技術部・北山拓夫さん)。「いらっしゃいませ」と笑顔を見せる男女のスタッフは爽やか。「今日のおすすめは?」とスタッフに声をかける社員の姿もあり、コミュニケーションが取れている様子が伺える。
中でも特徴的なのは「ライブクック」と名付けられたコーナーだ。ここでは、注文のタイミングにあわせて調理してくれる。その調理作業を見る楽しみとともに目の前で出来たての「ライブメニュー」が完成するのだ。この日の「ライブメニュー」は「揚げたて海老フライ」。海老フライが4本もつくが、男性だけでなく女性も多く注文していたのが印象的だった。