医療を変える「現場の力」

2012年5月17日

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神保康子 (じんぼ・やすこ)

ライター

広告代理店勤務後独立。一般雑誌や看護師向け情報誌等のライター・カメラマンを経て国際医療福祉大学大学院医療福祉ジャーナリズム分野修士課程修了。主に医療、看護分野の取材、執筆、撮影を行う。

 2012年が始まって間もないある日、私は統合失調症やうつ病、発達障害などと診断されている人たちの「当事者研究」のライブを観ていた。

 「当事者研究」? しかもライブ? いったいなんのこと? と思われるだろう。

 北海道のとある場所を中心に始まった、精神疾患等を抱える人たちが自分で自分の病気を「研究」する取り組みが、いま全国的な広がりを見せている。

私の病気は『おおかみ少年自爆型』です。

 ステージに並んだ椅子から立ちあがったTさんは「“自己病名”は、『おおかみ少年自爆型』です。解離性障害と発達障害を持っています」と自己紹介をした。

この日、当事者研究を行ったTさん(右)。仲間と考えた自分の助け方を実際に練習してみる。中央は主催者の向谷地生良氏(本コラムの写真はすべて筆者提供)
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 そして、ステージ上の椅子に座る数人の仲間たちに向かい、自分が今どのようなことに困っているのかについて語り始める。

 Tさんの困りごとは、自分の思っていることを伝えたいのに感情が爆発してしまい、逆のことを言ってしまうことだ。

 ホワイトボードに感情が爆発するまでのサイクルを書き出し整理し始める。寂しさから、注目を集めたくなる。どうしたのと聞かれるとうれしい。なのに寂しいと言えずにもっともっと、感情が爆発していく。

 「伝える練習したことあるの?」と仲間から声が挙がる。

 「ない」

 「じゃあ、練習しよう」

  と、ロールプレイが始まった。

あなたの幻聴さんは、なんて言ってるの?

 また、幻聴が聞こえ、自傷行為が止められないOさんの困りごとは、「夜寝ようとすると幻聴がきて、眠れない」という症状だ。

 「それはどんな声?」「男の声? 女の声?」「知っている人?」など、自らも精神疾患からくる苦労を抱える仲間たちが次々に質問を投げかける。「俳優の○○さんみたいな声で、話しかけてくる」と、Oさんもこと細かに幻聴について説明をする。

 ここでは、当事者研究を行っている本人たちは精神病患者や、発達・精神障害者ではなく、抱えている問題や、解決しようとしている課題の「専門家」と呼ばれ、頼られる。「そのことに関しては、じゃあ爆発の専門家の○○さんに聞いてみましょう。どうでしょうか?」「○○さんは、自傷行為が得意だよね。どう思う?」のように。ちなみに、幻聴についてはさんづけで呼ばれる。「あなたの幻聴さんは、なんて言っているの?」という具合だ。

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