WEDGE REPORT

2012年3月29日

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市場規模6兆円。国策・医薬分業で伸びた調剤薬局には多くの資本が参入した。
しかし、その競争の実態は、病院の門前展開とポイントカード程度。
医師の処方どおりに調剤する薬剤師に患者は価値を感じない。
質をめぐる競争に踏みこんで、真の成長産業を目指してほしい。

伸びる調剤薬局市場

 「今度、本院は院外処方になったので薬を外の保険薬局でもらって下さい」。といっても病医院の前に立ち並ぶ門前薬局で薬をもらってお金を払うのが日本の医薬分業だ。

 患者から見れば不便極まりない制度だが、院外処方率は1980年度にわずか3.9%だったのが、2009年6月現在で62%(病院が70%、診療所が59%)までになっている。その市場規模は、約6兆円にも膨れ上がり、この約10年間で市場は約3倍に成長した。まさに成長産業の“有望株”だ。この市場規模は百貨店業界の売上総額に匹敵する。

 デパートは保険がきかないが、保険薬局は健康保険がきく上に政府が値段を決めてくれる。しかも、薬代の他に薬剤師の技術料もオンされている。概ね薬代が7割で、調剤基本料や薬学管理料などの技術料部分が3割。ということは約1.8兆円の費用が医薬分業によって新たに国民に課されたということだ。

 もちろん分業以前も薬をもらう時に調剤料を病医院に払っていたが、それは微々たるもの。いわゆる薬価差益(国が定めた薬価と病医院の購入価の差額)がその穴埋めをしていた。しかし、ひところ23%あった薬価差益も今や8%台。むしろ一万数千品目にも及ぶ保険薬を備蓄するコストの方が高くなってしまった。そこで病医院は薬価差益を放棄して、専ら院外処方せんを書くことで収入を得る方向へ転換したというわけだ。

 保険薬局がうまみのない薬価差益で経営が成り立つ理由は、先述の技術料だけではない。

 病医院は医療法で株式会社の参入を禁止しているが、保険薬局は薬事法下にあるので薬剤師の免許を持たない人でも経営できる。その結果、最近はドラッグストアやコンビニ、さらには商社なども参入している。資本力をバックにチェーン化することで「規模の経済」を働かせているのだ。中には、株式上場し、立派に外資系機関投資家に配当している企業もある。

 あれだけTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)への参加に反対した医療界も、何故か保険薬局に寛大だ。国民医療費に占める割合も94年度に4.1%だったのが、09年度には16.2%と、伸び悩む歯科の7.1%の2倍強となっている。

 そもそも保険薬局は何のために導入されたのか。薬価差益に依存していた医師から薬剤師に調剤権を移すことで処方量、ひいては薬剤費を適正化することではなかったのか。であれば総点数に占める薬剤料の割合は減少しているはずだ。しかし、実際はここ10年間薬剤費のシェアがほとんど変化していないことを見ると、その削減効果は皆無と言わざるを得ない。特に09年度は調査開始以来、初めて3割を超え、入院外に至っては40.3%となっている。

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