共産党は事件の処理に大慌て
薄煕来解任その後

消息不明の幹部たちはどこへ?


富坂 聰 (とみさか・さとし)  ジャーナリスト

1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。

チャイナ・ウォッチャーの視点

めまぐるしい変貌を遂げる中国。日々さまざまなニュースが飛び込んできますが、そのニュースをどう捉え、どう見ておくべきかを、新進気鋭のジャーナリストや研究者がリアルタイムで提示します。政治・経済・軍事・社会問題・文化などあらゆる視点から、リレー形式で展開する中国時評です。(画像:Thinkstock)

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「長老たちを交えた8月の重要会議、北戴河会議までには何とか態勢を立て直さなければならない。そのために党中央では各部門が必死で調整を続けています。『十八大』(中国共産党第十八回全国代表大会)の成功は、党中にとってそれほど大切なものなのですから」(北京の政界関係者)

広がる事件の余波

 薄煕来党中央政治局委員兼重慶市委員会書記(=書記)の解任に続く「双規」(党の規律違反に対する取り調べ)で揺れる北京・中南海はいま、事件の処理に大慌てだ。

 かつて政治局委員の地位を残したまま中央で生殺しにした党幹部の名前にちなんで「楊白冰パターン」の処理もささやかれていた薄に、「双規」によって厳しい処分を決めた4月上旬から、事件の余波が凄まじい勢いで広がり続けている。

消息不明の弟
自主退社した兄

 薄煕来よりも出世が早かったとされる弟・薄煕成は、いまだ消息が伝えられていない。異例の若さで北京市旅游局長に昇り詰め、一族の期待を集めると同時に父親の人脈を生かした口利きで、“裏の人事部長”と陰口を叩かれたことで、最終的には失脚し、数年前までは北京の六国飯店の董事長(取締役)をしていたが、すでに引退して一線を退いていた。

 香港で李学明と名乗って暮らしていた兄の薄煕永は、同地に本社を置く中国光大集団(エバーブライト)の執行董事長として年2000万円近い収入を得ていたが、事件が明るみに出ると同時に自主的に退社を発表している。エバーブライトは元々政府系企業であるだけに、北京から圧力がかかったことは間違いない。興味深いのは、煕永が辞職を発表した翌日の香港では、エバーブライトの株が8%も上昇したことだ。この反応は、いまだ中国系企業が政治的な影響を強く受けていることを裏付けた。

次々と「双規」になる腹心たち

 薄の身柄拘束の余波は、中央政界から地方へと本格的な広がりを見せている。現状、身柄を拘束された関係者(官僚、秘書、企業経営者など)は50人を超え、なかでも薄の不正蓄財の全容解明でキーマンとされてきた大連実徳集団の徐明会長(薄煕来夫人の谷開来と同じく3月18日逮捕)を筆頭に、夏徳仁元大連市書記や戴玉林元丹東市書記といったかつての薄の腹心が次々と「双規」となったのである。

 身柄拘束の確かな情報はいまだ得られていないが、軍にも消息が分からなくなった幹部がある。中国の核・ミサイル戦力を担う第二砲兵のナンバーツーである政治委員の張海陽上将(大将)が事件後から姿を消したとの噂でもちきりだ。

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著者

富坂 聰(とみさか・さとし)

ジャーナリスト

1964年、愛知県生まれ。北京大学中文系に留学したのち、豊富な人脈を活かした中国のインサイドリポートを続ける。著書に『苛立つ中国』(文春文庫)、『中国という大難』(新潮社)、『中国官僚覆面座談会』(小学館)、『ルポ 中国「欲望大国」』(小学館新書)、『中国報道の「裏」を読め!』(講談社)、『平成海防論 国難は海からやってくる』(新潮社)、『中国の地下経済』(文春新書)、『チャイニーズ・パズル―地方から読み解く中国・習近平体制』(ウェッジ)などがある。

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